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ミコ・サルウェ  作者: 皆月夕祈
冬花の奇跡、群狼の旅人(上)
103/123

龍夢

 黒く、しかし、明るい世界。

 シンクは、ここが夢の中であると、すぐに気が付いた。


 ただ、どうして自分が夢を見ているのか、何時寝たのか、寝る前に何をしていたのか、どうしても思い出せなかった。

 

 遠く上空には、点々と輝く星々が見え、下を見下ろせば、広大な大地にただ青々とした草原が風になびいていた。

 

 その光景は涼し気で穏やか、心地よく美しい。

 

 しかし、シンクは、その光景を見るともなしに見ながら、退屈を感じていた。



(……。)


 シンクは上空に昇り”その巨体”を星の川へと横たえる。

 

 星々の放つ光が、シンクの身体に反射して、その美しい鱗が輝いた。

 

 龍だ。


 夜空をキャンバスに見立て、砂金によって描かれた様な黄金龍。

 

 

 

 しかし、シンクは、畏ろしくも神々しいその身体を見ても、なんの反応も示さず、ただ無感動にそれを眺めているだけであった。




(しばらく、一人ですごし過ぎたかしら……。”あれ”らも、ここの所めっきり様子を見に来ないし……。居ると煩わしいと思うのに。……最後に会ったのは1000年……2000年位前だったかしら? こういう時は、案外500年位しか経っていなかったりする物だけど、どうだったかしら?……確か、『本質の成長』が、新しい神が産れたって話を、しに来たのが最後かしらね?)


 明らかにシンクとは別の何かが、彼女の意識と混じりあって、その主導権を握っている。

 


 シンクは、自らの身体から視線を外して、クイと首を横に向けた。

 すると、そこには大きな狼がいて、それもシンク同様、夜空に身体を横たえていた。



 亡骸である。

 彼はシンクの元伴侶であって、しかし、悠久の時に飽いたのか、理由も告げず、今は既に太陽の女神の元へと旅立って、魂はここに無かった。



(これも浮気になるのかしら?……どちらにしても薄情な事よね。)


 シンクは不貞腐れて、目を細めた。

 脳裏に恨めしい太陽の女神の姿が浮かんでくる。


(むう……。)


 そのまま暫く、動きもなく、何事か考えているシンク。


 

 熟考している様だが、その中身については” 別に太陽の女神に、何ら非が無い事は理解しているが、自らの理屈と違う部分が、何か嫌がらせの一つでもしてやりたい”という、そんな底意地の悪い事であった。

 

 (退屈しのぎという実益もかねて……ね。)


 ただし、怒らせて、正面切って戦うとなると、シンクでは、あからさまに神格が足りない。

 シンクは自らの無力を自覚して、苛立ちを覚えた。

 

 相手が悪い事は解っていた。

 

 そんじょそこらの神でなく、あの女神だ。

 尋常の方法では、傷つけることすらできないし、それどころか、あれは神すら殺せる力を持っている。



(アレの脅威になれる存在なんて、無色の獣と……あとは……。)

 

 そこまで考えた所で、シンクの脳裏に一人の男神の姿が思いついた。


(ふふふ……あら、いいじゃない。)


 シンクはほくそ笑む。 

 彼女的には名案が浮かんだらしかった。


 どうせろくでも無い事である。


(この方法なら、別に敵対する事もないし、本当に嫌がらせが出来る。程度も丁度いいし……ふふふ、私の頭もなかなか悪くないんじゃないかしら。)



 シンクはそう考えると、楽しそうに目を瞑った。



 すいません。

 流石に1000文字そこそこでは短すぎるので、本日は2話投稿いたします。

 次更新は夕方投稿です。

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