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1-10 ズー ブレイクアウト

 いやぁ~やりましたよ、リスナーの皆さん! どうも『マスクドDJ雷音』です。

シーム星に向かっていた、巨大移民船ホープは宇宙海賊達の頑張りによって

まさかまさかのシステム復旧ですよ。

これでシーム星への墜落も防ぐ事が出来るし、皆無事に帰れるわけです。

え? どうせそんなに上手くいくわけないって思ってます?

そうなんだよねぇ……喜びや感動が大きければ大きい程、それが失われた時の

落胆は大きい、それをすぐ味わう事になったんだよねぇ。


「止めるか軌道を変える事は出来そうか」

「制御エンジンのエネルギー充填にもう少し……」


その時だった、周囲が爆音と吹きだす火花で包まれた。

キラキラ光っていた太古の機械達も静かなただの箱のなっちゃった。

壁一面に何かを映していたモニターも消え、

灯っているのは照明機器だけになってしまった。


 アルスさんは登る炎に光線を浴びせて火を消し始めた、

あの銃は消火器にもなるんだね。

火は程なく消え、すっかり静かになっちゃった……二つの意味で。

キャプテンワールドの背中も悲しそうだ。


「すご、かったよ? 何をどうやったのか分からないけど、その……感動した。

落ち込むに事は無い、偉大な事をやったんだ、さあ~さっさと撤収しよう」

「……」

「さあさあ、そのぽりうれたん? で、パパっと自分達の船に帰っちゃおうよ。

……って、あ! 良い事を思い付いたぞ、

ソレをこの船に取り付けてテレポートさせちゃうってのはどう!?」

「テレポータンだ、こいつは人間1人を転送するので精一杯だ、

それにも膨大なエネルギーが要る」

「あ~……そんな事が出来たら、とっくにやってるか」


(おい大変だ! さっきのメインエンジンの点火で、

ほんの少しだがホープは加速してしまったぞ。

シーム星への墜落が早まってしまう、早く逃げるんだ)


加速って!? もうそろそろ時間も無くなってきた所だったのに絶対マズイよ。


「もう一度だ……最初からやり直す! 急げ!!」

「まだやる気かこの石頭!時間はもう殆ど無いんだぞ」

「最後まで諦めん! 美しい星が1つ駄目になるかどうかって瀬戸際なんだ」


宇宙海賊達はワールドの指示で走り出し、焼け焦げた機材を取り外し始めた。

本気でまた最初からやるつもりらしい。


「あんたが命じれば、部下達は従わざるをえない、あんたが諦めない限り

こんな事にあんたの部下は付き合い続ける事になる、それぐらい分かるだろう」

「……」

「お気に入りの美しい星1つと、そうまでしてくれる部下達、

どっちを取るかぐらい弁えてると期待してるよ。

私はもう行く、もう1人の仲間を探さなくてはいけないからな」


「その必要は無いです」


作業に走り回っているとばかり思っていたゴリラ顔の宇宙海賊の1人が、

キャプテンワールドの背中に銃口を密着させている。


「……何のつもりだロディ?」


あぁ~この人が私をここに連れてきてくれたロディか。

いや違う、ロディかと思ったそいつはグニャグニャと揺れだし、

体が赤く変色してゆく。

見覚えのある艶やかな肌、美しいプロポーション……。


「シーム星人、擬態して紛れ込んでいたのか」

「カナロアさん! まさか、そんな能力まであったの?」


シーム星人は、自由自在に様々な形になれるんだから、

他の誰かになりすます事だって出来ちゃうんだ、便利過ぎる。

アルスさんが仕掛けた目くらましの間、私は一目散に出口に向かっちゃったけど、

カナロアさんはその隙にそんな事をしていただなんて。


「全員作業を辞めて母船に戻れ、この銃の設定は今スタンショットではない」

「てめえ! ふざけやがって!」「キャプテンに対して貴様!」


宇宙海賊達のガラガラした怒声で、部屋が揺れるような騒ぎになってしまう。

それをワールドが手を振りかざして静止させると、静かに頷いて見せた。

悔しさに表情を強張らせつつも1人、また1人と

テレポータンの起動ツイッチを押していった。

宇宙海賊達は青白い光に体を包まれたかと思うと、その場から姿を消した。

ゴツい奴らで溢れかえっていたこの部屋が、一気に広くなったような気がする。


「そうだ、これで良い」

「え?」


ワールドが発した意外な言葉に、カナロアさんが一瞬だけど隙を見せてしまった。

それを狙ってだったのかは分からないが、ワールドはその隙を見逃さなかった。

即座に胴を捻って、銃口の先から身を逸らすと、くるりと向き直り

カナロアさんの持つ銃を、手刀で払い上げた。

するとその両者の間を斬り裂くように、青い光が走る、

勿論こういうとき口より先にぶっ放すのはアルスさんだ。

ワールドは一歩身を引きながら、腰から抜いた銃でアルスさんを撃った!


「うっ……」

「仕事熱心なのも善し悪しだな、銀河パトロール隊」


撃たれた右肩を抑え痺れて動けなくなるアルスさん、

打ち込まれたのは、さっき聞いたスタンショットって奴だろうか?

ワールドはゆっくりアルスさんの方に歩み寄ると、

動けないアルスさんのテレポータンの起動スイッチを押した。


「お前にはここで退場してもらおうか」


アルスさんは青白い光に包まれてゆく。


「カナロア、ライオン……に、げろ……」

「お前もだっ」

(うわっ!!)


ワールドは足元のバートをサッカーボールのように蹴飛ばした。

バートはアルスさんが転送されてゆく光の中へ飛ばされ、

そのまま消えてしまった。


あ……あの……ちょ……ちょっとブレイク。

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