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1-11 ドレッドフル ジョーカー

 どうも『マスクドDJ雷音』です。

ヘビーリスナーの皆さんにはもう、私がここまで経験した様々な事を、

根本では楽しんでいたっていうのは、きっとバレてるんだろうね。

荒唐無稽の連続にはもうウンザリで、すぐにでも家に帰りたい、

それはずっと変わらず思ってるんだよ。

でも、宇宙人に拉致された時も、その宇宙人に星を救って欲しいと頼まれた時も、

トリガーハッピーな銀河パトロールさんが現れた時も、

翻訳機越しの上手く噛み合わない彼女達との会話も、

彗星だと思ってた物は巨大宇宙船で、その中に無人の街を発見した時も、

宇宙ゴリラの集団とそのボスが超強くて、どうしたものかと焦った時も、

お掃除ロボットから10億年も前の昔話を聞かされた時も、

宇宙海賊の船長が無茶な美学と信念で不可能を可能にした瞬間も、

私は確実に楽しさの中にいた。


しかしもう……楽しんでる時間は無い。

そろそろ、ちゃんと私が動かなきゃだよね。

巨大移民船ホープは速度を増し、尚もシーム星へ向かっている。

ワールドを残し宇宙海賊全員はカナロアさんの奇策によって船に戻り、

アルスさんとバートはワールドによって転送されてしまった。


 二人が転送されるのを見届けると、ワールドが銃口をこちらに向けた。

何気にワールドがこれをやるのって初めて? 他の宇宙人は散々やるけどさ。

しかし、射撃の腕は充分知っているし、どうしてやろうか。


「これでもう文句はあるまい、俺1人で、もう一度この船を動かしてみせる。

邪魔をすればお前達も容赦はしない、さっさと脱出するんだな」

「駄目だ、あんたもここから出てもらう」

「何故そこまで俺の邪魔をする」


「私がここまで、田舎の星から遥々やって来たのは命を救う為だ。

シーム星の生き物だけじゃない、この船の墜落によって奪われる命を

1つでも多く救う為だ。それはキャプテンワールドあんたも含めてだ。

私は、このままここを去ることはしない。

何故かって? それは私がヒーローだからだぁ!!」


「フ……フフッ」


良し来た!

私は即座にワールドに接近、やつのテレポータンのスイッチを押してやった。

こいつは相手を見下して笑うとき、顔を背け目を閉じる癖があるんだ。

これぐらい青臭い恥ずかしい台詞を、下等な異星人が吐けば、

必ずそうすると思ったんだ。


「隙ありだ」

「き……貴様」

「自分で何でも出来るって、思い上がりが過ぎたんじゃないの? キャプテン」

「……フフフ、してやられたな、見くびっていたよ田舎惑星のヒーロー。

お前とは、またゆっくりと話したい、逃げ遅れ……な……」


テレポータンが作動したワールドは、青白い光に包まれ、転送されていった。


 さて、これで邪魔者はいなくなったか。

振り返ると、カナロアさんが悲し気に立ち尽くしていた。


「私達も、早く行かないとね」

「はい……そうしましょう。コレ、渡すのが遅くなった」


テレポータンかぁ、瞬間移動って一度やってみたかったんだよね~……おっと

そんな事言える空気じゃないか、カナロアさんは、すっかり沈み込んでる。

無理も無いよね……泣いている? そう見えるような悲しい表情に私は見えた。

母なる星とそこに住む生き物達を守りたかった、でもそれは叶わなかったんだ。

私はそんなカナロアさんを抱きしめ、肩越しに精一杯優しく声をかけた。


「さあ……行こう」

「はい……」


カナロアさんはテレポータンのスイッチを押す。

……が、私は押さないんだな~これが。


「何をしているのですかライオン! まさか」

「カナロアさんの計画を成すのに宇宙で最も適した者、その検索結果は私だった」

「それはっ、待てライオ……」

「それは間違ってない」


私の言葉が届いたかは分からない。

テレポータンの光と共に、カナロアさんの姿は消えていった。

今度こそ、邪魔者はいなくなった。


 さぁて~と! やりますかぁっ!! 破壊不可能の物質だって?

上等じゃないの、この私がその定説諸共ぶっ壊してやりましょう。

膝と股関節の屈伸を軽くすませ、肘と肩をグイっと伸ばしてストレッチ完了。

深くしゃがみ込み、全身の今まで抑え込んでいた力を解放させる。

そこから飛び上がり、天井に拳を叩きこんだ!

数枚の隔壁をぶち抜いて、そのまま破壊不能の物質で出来た外装も突き破り、

宇宙空間の闇の中に飛び出した。


 眼下にどデカイ綺麗な星が見える、これがシーム星か……。

緑豊かな大陸に、星の大半を占める広大な海が青く輝いている、とても美しい星、

深い深い宇宙の闇を、煌々と照らす宝石のようだ。

これを見れば、キャプテンワールドが惚れ込むのも分かるね。

大丈夫、この美しい星を侵させはしない。

バート御免な、10億年も綺麗にしてきた街、壊しちゃうよ。


 私は左足を高々と持ち上げると、そのまま真っすぐに降り下ろし

元破壊不能物質にぶち込んだ。踵が突き刺さった外壁は大きなクレーターを作り、

中心から四方八方にヒビが走った。

それが数キロ四方に及ぶ全ての面へ枝分かれして、全体に行き渡った瞬間、

気圧差による作用も加わり、粉々になって破裂した。

さっきまで破壊不可能だった外壁も、一段づつ重力が増す階段も、街の建物も、

長い長いエレベーターも、みんなバラバラに砕けて飛び散って行く。

到着してからずっと、早くこれがやりたかったのに、

沢山の出会いと冒険が詰まっていた船が散っていくのは、寂しい気もするな。

しかしシーム星は守られたんだ、これで一件落着だ。


……いや待て! 大事な事を忘れていた!!

マスクの下はきっと青ざめていたに違いない、私とした事が大失態だ。

私は飛び散った瓦礫をステップに飛び回り、必死でそれを探した。

そして見付けた、カナロアさんが擬態していて置き去りにされている

ゴリ……、いや宇宙海賊ロディだよ。

カナロアさんに装備一式はぎ取られ、突然の崩壊に、どうする事も出来ず

宇宙空間で溺れている様子だった。

周囲の瓦礫を蹴りロディの下へ向かう、折角のテレポータンだけど仕方ない。

私は、それをロディの体に取り付けスイッチを押した。


「お前は銀河パトロール隊と一緒にいた、こ、こんな事をしたらおま……」


よし、これでOKだ……すっかり忘れてたよ、いや~危ない危ない。

さてと、最後の仕上げといきますか。


 もう瞬間移動では帰れないんだし、とことんまでやってやるぜ。

辺りに浮かぶガレキの中で一際大きなアブダイトの破片を見付けると

そこへ飛び移り、思い切り殴り付ける。

破片は砕け、周囲に放たれた衝撃波が瓦礫を遥か彼方へと吹き飛ばした。

移民船ホープの破片は辺りから消え去り、それらが降り注ぐ心配もなくなった。

つまり、私が足場やステップに出来るものも無くなっちゃった。

後はシーム星の重力に引っ張られ、落っこちて行くだけ。


え? さっきまでのパワーで何とかならないかって?

う~ん怪力があっても、空や宇宙を飛べるわけでもないし、

そこまで何でも都合良くはいかないんだよね。


 日の浅いリスナーさんは、このままシーム星に落下していって

雷音さんは大丈夫なの!? って心配してくれてたりする?

な~に大丈夫、ちゃんと次の水曜の夜にはラジオで私の声が聞ける筈だから。

地球を飛び出して、たった4、5時間の出来事だったけど、本当に楽しかった。


最後まで聞いてくれて、ありがとう。 じゃあ、また会おうぜ。

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