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弓佳ちゃんの暴走癖

「ふぇありーさん。あなたはなぜすぐに調子に乗ってしまうんですか?」

「はい……。すいません」

「ほんとに、いい加減学習しろって話ですよね」


 清々しくブチ壊れた『土竜』の目の前で僕は東藤さんに土下座させられていた。

 『格納庫』内部はくだけ散った『土竜』の破片で散らかっており、転倒の際に破壊した床は今もまだ修繕されていない。


「ほんとだよふぇありー。全くもう」

「えぇ!? 弓佳ちゃんも焚き付けたよね!?」


 壊れた『土竜』と被害を受けた『皇帝改』を見ながら弓佳ちゃんが呟くように言った。ひどい。責任転嫁も甚だしい。いや、僕が悪いんだけどさ。


「ま、何にせよ『走行』はまだまだってことね。着地の際に出る位相のズレと機体バランスを考慮してなかったのが根本の原因よ」


 と、壊れた『土竜』の近くで何やら調査をしていた風見さんがため息をつきながら戻ってきた。彼女は手に持っていたタブレットをこちらに向けながら口を開く。


 タブレットに映されているのは『土竜』の実験の録画だ。『土竜』は無事に一歩、二歩と踏み出して違和感のない歩行を達成している。が、走るような姿勢を見せた瞬間、まるで何かに押されたように物凄い勢いで地面に向かって突撃している。


 うわ。すごい。気持ちいいくらいの滑り方だ。何だかバナナを踏んで滑ったような滑稽さもあるような感じ。


 そして着地はこれまた物凄いものとなっていた。近くにあった『皇帝改』を巻き添えにしながら四肢がくだけ散る様子は、なんとも形容しがたい迫力があった。


「そうですね。そこの制御が甘かったです。すいません」

「いえ、あなたが謝ることじゃないわ。全てふぇありーが悪いのよ」

「なんで!? 理不尽じゃない!?」

「ふぇありー先輩さいてーですぅ」

「えぇ!?」

「ほんとにふぇありーは……。そんなんじゃ『風見鶏騎士団』に勝てないよ? もうすぐで試合なんだから……」


 みんなして僕を責め立てる。鉄菊さんに至っては完全に便乗だ。僕の先輩ポジションがあああ!!

 そして、事もあろうか僕を煽った弓佳ちゃんに怒られると何だか釈然としないものがある。しかしそんな僕の様子とは裏腹に、なんだか焦ったような顔をしながら風見さんは弓佳ちゃんに詰め寄った。

 

「……って、え? 弓佳、あなた今なんて言った!?」

「え? もうすぐ試合だよって……」

「はぁ!? まだ未定みたいな事言ってなかった?」


 後ろで頭を抱える東藤さんや、目を見開いている風見さんなんてまるで気にした様子もなく、弓佳ちゃんが鉄菊さんと目を合わせて溢れんばかりの笑顔を浮かべた。


「昨日会って決めたの! 対決は二週間後、こちらのBWでルールは『殲滅戦』! だけど、機体が壊されたら負けっていう特殊ルール」

「はぁぁぁぁ!?!? あんた……本気!?」

「本気だよっ?」 


 え? 何か問題でもある? とでも言わんばかりの弓佳ちゃんに対して呆れたようにため息をついた風見さん。

 まぁ僕から言わせてもらうと、この展開は簡単に予想できた。むしろ即決してこなかっただけ進歩だと言わせて頂きたい。


「アホかアンタはぁぁぁ!!!」

「ひたいひたいひたい!」


 そしてまさかの報告にご立腹の風見さんが弓佳ちゃんのほっぺをぐりぐりと引っ張ったのだった。






ーーーーーーーーー 




 そして数分後。今度は『ブリーフィングルーム』で弓佳ちゃんが風見さんに正座させられていた。

 風見さんの表情は怒りに歪み、まるで鬼を彷彿とさせる面構えをしていらっしゃる。こんなこと言ったら殺されるから言わないけどね。

 まぁでもこればっかりは弓佳ちゃんに同情することはできない。なぜ上役は技術部門に相談せずに約束を取り付けてくるのか。


 まあ今に始まったことじゃないんだけど。


「で? いつの間にあのクソ兄貴と会ってたかは知らないけど、詳細を教えなさい!」

「に、二週間後に『風見製人型戦車』と機動兵器合戦だよ」

「機動兵器って?」

「『悠久機』とか、今回の『風見製人型戦車』とかの人型ロボット兵器のことだよ……」

「で?」

「負けたら風子ちゃんは『風見鶏騎士団』に逆戻りで、勝ったら団長の座を風子ちゃんに渡す」


 そこまで弓佳ちゃんが言うと、風見さんは少し安心したようにため息をついた。心なしか顔も鬼から般若くらいまで怒気レベルが低下した気がする。


「……まぁ、最低限その約束を取り付けたならまだマシね」


 少し頭を悩ませたようにしながら、風見さんは言った。

 前から疑問だったけど、なんでそんなに風見さんは『風見鶏騎士団』の団長になりたいのかな? なんでワザワザ勝利条件をそうやって設定したんだろうか。


 ……うん。考えてもわかんないし、聞いてみよう。


「どうしたのふぇありー。変な顔して」

「へ、変な顔って……。えっと、風見さんはどうして『風見鶏騎士団』の団長になりたいの?」


 と、僕がそのまま疑問をぶつけると風見さんは少し迷ったように視線を泳がせた。そして小さく消え入りそうな声で答える。


「……団長になりたいわけじゃないんだけどね。……『アイツ』を蹴落とすためよ」

「アイツって……?」


 僕が続けて質問しようとすると風見さんは無言で首を振り、追求を拒否した。まるで今はその話をする気はないとでも言わんばかりの態度に、僕は出かかった言葉を飲み込むしかなかった。



 そして顎に手を当てて少し考え込んでいた東藤さんが遠慮がちに口を開く。

 


「……もし先程の『土竜』の転倒が風見さんの予想通りなら原因の修復に三日とかかりません」

「予想通りならね」


 珍しい風見さんのハッキリとしない態度に驚きつつも、僕は気持ちを切り替えて試合に集中することに決めた。確かに風見さんの件は少し気になるけど、今大切なのは迫り来る決戦に集中することだ。


 そんな思いを胸に僕は皆を見渡す。


「ちなみに予想通りなら他に何か問題ってあるの?」

「逆に聞くわふぇありー。問題がないと思う? 『皇帝(ツァーリ)』を思い出してみなさい」

「……そうでした」


 『皇帝』は出撃と同時に首回りに破損が生じ、唯一にして絶対のメインウェポン、『風見砲』が使用できなくなったのは記憶に新しい。

 だがそんなことを気にしていてはいつまでたっても完成なんて迎えられるはずがない。ある程度で満足しないと、いつまでも『土竜(もぐら)』は悠久機としてデビューできないのだ。


 そして不安な気持ちを振り払うかのように風見さんは首を振り、僕たちを見渡した。


「まぁもう約束してしまったのなら仕方ないわ。できるところまで調整して、敵の機動兵器を破壊するわよ!」

「おーーー!!」


 合いの手とばかりに弓佳ちゃんが拳を握り、天に向かって突き立てる。こういう鬨(とき)の声はキャプテンである弓佳ちゃんのセリフじゃないの……? なんていう言葉はもちろん飲み込んだのだった。


















 


なろうの禁止に『評価をお願いする行為』ってあるんですが、例えば僕が、

誰が評価して欲しいなぁー (チラッ、チラッ

みたいなことしてそれで実際に評価をもらったら規約違反になるんですかね?

まぁどうせそんな変わらんから一緒か……。

まぁそれはそれとして、拙作を読んでくれてありがとうございます。

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