悠久機試作18号機『土竜』、開発!
数日後。僕たちは風見さんと東藤さんに呼ばれて『格納庫』に集まってきていた。
こうも巨大人型ロボットが立ち並んでいる姿を見ると、なんだかSFの世界に入り込んだような錯覚を感じる。
そして、複数台並んでいる『皇帝改』の横には僕たちの新型『土竜』がその存在をアピールしていた。
『土竜』は『皇帝改』と背丈はほぼ同じだが、かなりの軽量化がなされている。東藤さんがかねてより開発していた『炭素繊維複合材料』を装甲素材に使用したため、これまでの悠久機と比べるとかなり軽くなっているのだ。
と、言っても元々大きいからまだまだ重いんだけどね。
基本は漆黒の装甲に包まれていることは変わらない。左肩には相変わらず楷書で金色で『土竜』と書かれている事には東藤さんの愛を感じるし、頭部には相変わらず『風見砲』がセットしてあるのには風見さんのこだわりを感じる。
『皇帝改』は足回りがとてつもなく大きいため、まるでピラミッドのような造形をしていたが『土竜』はそれとは異なりかなり人型に近づいている。地面との設置面積を確保しなければならない関係上、足だけは不自然に大きいがそれでもかなりスリムになった。と、思う。
これだけ細くなったってことは遂に自走できるようになったのか!! 流石風見さん凄いよ!
「おおー。なんだか痩せたね! これって歩けるの?」
「無理よ。あなたはこれまでの『悠久機』から何を学んできたのかしら? そんな簡単にこのサイズの人型が歩けるなら苦労しないわ」
「……そっか」
しかし『土竜』の横でなにかカチャカチャと作業している風見さんに話しかけると予想外の言葉が帰ってきた。歩けないのかよ。
そして彼女は作業の手を止め、ずり落ちてきていたヘルメットを持ち上げながら僕の方へと歩いてきた。
僕はそんな彼女に対して口を開く。
「こう、もう少し足回りをスタイリッシュにできないの?」
「かなり軽量化はしたけど、安定歩行を実現しようと思うとどうしても下半身が肥大化してしまうのは避けられないのよ。人型に近づけているだけデザインには気を使ってると思いなさいよね」
そして僕の横に来て、並んで『土竜』を見上げ、誇らしそうに口角を上げる風見さん。ちなみに悠久機試作18号『土竜』には僕はほとんど関与していない。
僕の工場の少し特殊な創造機械にすっかり慣れてしまった風見さんが一から一人で作り上げたのだ。
うん。少しだけ悲しい。やはり僕も頭脳たちに負けないように精進しないと。もっと勉強しよう。
しかし、そんな僕の心の声を読んだかのように、風見さんがニヤリと不敵な笑みを浮かべ口を開く。
「ここからはふぇありーの出番よ?」
「え、ぼく?」
「えぇ。厳密には東藤もだけどね。忙しくなるわよー?」
その笑みは風見さんが『皇帝』の設計図を持ってきたときのそれと似ているような気がした。
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そして僕は風見さんに言われるがまま『土竜』のコックピットに乗り込んでいた。今回の目的は『エリクサー補助歩行』らしい。
『土竜』の足元付近では、弓佳ちゃんと新入りの鉄菊さんがまるでアイドルにでも向けるような視線を僕、いや『土竜』に送ってきている。
弓佳ちゃんが何やら説明しているようで、弓佳ちゃんの言葉に鉄菊さんがうんうんと頷いている。
ちなみに鉄菊さんはもう我ら『悠久機プロジェクト』の制服である漆黒の軍服を身に纏っている。漆黒から流れ出る透き通るような金髪はなんだか絵の中の人のように感じるね。
と、僕がそんな風にどうでもいい思いを馳せていると、スピーカーから小さなノイズが聞こえてきた。東藤さんからの通信だ。
『補助スラスター試作システムスタンバイ完了しました。ふぇありーさん! そちらにタイミングを譲渡します!』
「了解!」
僕は東藤さんの声を受けて意識をコックピットに集中させ、『悠久機』の操縦幹を握った。自動制御開始だ。
ちなみに今回の実働実験の目的は前回と同様、『悠久機』を安定して歩行運動させることにある。
具体的には歩行、走行時に発生する慣性力や設置圧を『エリクサー』を逆噴射することで相殺しようという試みだ。
この間、風見さんが実験していたそれだ。『悠久機』各部に発生する負荷を『エリクサー』の逆噴射により軽減する。
実際この手の技術は風見さん曰く既に車両では確立済みらしいが、人型に適用した例はたぶん『土竜』が史上初めてらしい。
ま、当たり前か。
僕は風見さんの知識と技術に心ので平伏叩頭しながら、コックピットの左手にあるレバーを倒した。
東藤さんの自動制御が働いている間は操作自体はとても簡単だ。レバーを倒した方向に『土竜』が動くだけ。
もちろん急な制動は御法度だけど、慣れてしまえば弓佳ちゃんでも簡単に操作はできる。
「それじゃあ行くよ。『土竜』発進します」
『了解です。連結アーム切り離し……完了』
そんな東藤さんの声と共に、『土竜』を固定していた連結アームが次々と切り離されていく。そして優しい揺りかごの中にいるかのような心地よい振動が発生する。
「おおお。と、東藤さん。揺れがかなりましになってるよ!」
『悠久機』を作りはじたの頃は振動が激しすぎて、ボタンやらレバーやらがわけわからなくなったのがいい思い出だ。あの頃のコックピットは頭も打つし振動で指が震えてボタンが押せないしで最低だった。
そして僕がレバーを傾けると同時に体が軽く浮き上がるのを感じた。続いて起こる落下の衝撃。
ズズン。と、低い音が格納庫全体に響き渡り、それと同時に僕の身体に着地の衝撃が走る。そして一歩目を踏み終えた段階で『桜改』の記録は更新している。
『オーケーオーケー。いい一歩よふぇありー!』
「意味わかんないけど、ありがとう」
と、僕は興奮した風見さんの声に適当な相槌を返した。『桜改』は足をあげてそのまま下ろしていたから、爆音とともに床を踏み抜いていた。が、今回はエリクサーによる補助があるため、ふわりと地面に着地している。
僕はそんな感想を心の中に抱きながら、今度は逆の足を『土竜』に踏み出させた。
『いいわふぇありー! 完璧じゃない!』
二歩目も無事に踏み出すことに成功した。コックピットの振動減衰装置も上手く働いているおかげで僕にかかる負担も少ない。
「風見さん凄いよこれ! コックピットも全然揺れないよ!」
『ふぇありー変わって! 私も乗るのー!』
「ちょ、ちょっと待って弓佳ちゃん」
弓佳ちゃんの興奮した声から察するに、外から見た違和感も少ないのだろう。その結果に僕も思わず口角があがる。
そしてそのままレバーを倒し、三歩目も無事に踏み出していく。
凄い。本当に自然な歩行が実現できてる。
『よし! ふぇありー! 走ってみましょう!』
『いや、それはまだ早いような気がしますが……』
『キャプテン命令だー! 走れ! 風のように! 『悠久機』!』
「了解! いける! 大丈夫だよ!」
そして僕は東藤さんの忠告を無視して、目の前の制御盤を操作して、『歩行モード』から『走行モード』に切り替える。続いて小さく息を吸い、再びレバーをゆっくりと倒した。
しかし次の瞬間、僕のいるコックピットは真下を向いていた。
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最近の悠久機は進歩しすぎだと思う。でも同じところでグルグル開発しても面白くないというジレンマ。




