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強引な勧誘

 奪い取った銃から弾倉を抜こうとすると、僕がいつも使っている銃とは違う感覚が伝わってきた。


 あれ。全部樹脂材料で出来てるじゃんこれ。あれ? なんだこれ。


 本来、弾を発射する部分は強度の関係上金属製のはずだ。なのにも関わらず、僕が奪い取ったピストルは全てがプラスチックのような軽い触感をしていた。


「あぁ。何かと思ったらモデルガンか、これ」


 RWでの経験しかないからあまり偉そうなことは言えないけれど、本物の銃とはやはり大きな違いがある。でもだとしても人に突き付けるのは良くない。


「そうですよっ! だから返してくださいよ!」


 手をこちらに差し出しながら涙ながらに訴える鉄菊さん。風見兄はまるでこの世の汚物を眺めるかのような視線を僕に投げ掛けている。


 あれ? いや、なんで僕が悪いみたいな雰囲気になってるの?


 無論こんな空気、僕に耐えきれるはずがない。だから僕はスゴスゴと手にした銃を返そうと、銃のグリップを鉄菊に向けて差し出した。


「いただきっ!」


 しかしその瞬間、弓佳ちゃんの手によってそのモデルガンは奪い取られてしまった。


「てっちゃん! 君の愛しの銃は預かった! 返してほしくば今日の午後8時に『悠久機プロジェクト』まで一人でくること!」

「え? いやっ! は?」

「ふはははは! この怪盗キャプテンユミーカは狙った獲物は逃がさない! じゃっ! 詳しいことはふぇありーに聞いてね!」

「ちょっ! 弓佳ちゃん! 待って!」


 しかし言うが早いか、弓佳ちゃんはハンドガンを華麗にカバンに仕舞いながら校舎へ向かって駆け出していった。


 そして取り残される僕達。鉄菊さんは瞳を潤ませながら去り行く弓佳ちゃんに届かない手を伸ばしている。


 なんだか憐れだ。人に銃を突き付けたりしたから、自業自得っちゃあ自業自得なんだけどね。


「……うん。やっぱり銃をグリップするときは両手で持たないとね。盗られちゃうからね」


 と、鉄菊さんへと慰めの言葉をかけたが、彼女は僕をキッと睨むので僕は頭を下げたのだった。


 しかし、その時風見風太さんが何となく嬉しそうな笑みを微かに浮かべたのがチラリと視界の隅に見えた気がした。 





ーーーーーーーーー




 その日の夜。僕が工作機械を作動させながらすでに日課になりつつある『皇帝改ツァーリセカンド』を作っていた。

 もう図面を確認しなくてもどの部品がどこに位置するのか何となく覚えるようになってきた。自分で言うのもなんだけど、悠久機職人にとして第一歩はすでに踏み出した気がするよ。


 それにしても量産型の『皇帝改』だけど、結局一つ一つ僕が作っている。単純作業がこれ程までに多いんだから、もういっそのこと風見さんに量産のためのレーンを開発してもらいたい。いや、そんなことを頼んでもめんどくさいと一蹴されるのは目に見えているか。

 なんなら僕が開発してみようかなぁ。折角だし。できるかはわかんないけどさ。


『ふぇ、ふぇありーさん! 大変です! 大至急ブリーフィングルームまで来てください!』


 と、僕が手を動かしながら考え事をしていると工場全体に東藤さんの焦ったような声が響き渡った。


 はぁ。どうせ弓佳ちゃんが暴れてるのかなぁ、なんてぼんやりとその様子を頭に描きながら僕は壁にかかっている近くの受話器に手を伸ばした。


「こちら『皇帝改ツァーリセカンド』製作中ふぇありーです。東藤さん、どうしたの?」

『ふ、ふぇありーさん! 大至急ブリーフィングルームまで来てください! て、敵が攻めてきました!』

「は?」


 と、東藤さんは焦ったように言った。

 敵? ここらにいるモンスターの事かな? おかしいな。全部一蹴したはずなんだけどな。


 僕達のいるRWは遥か昔、僕が購入したワールドだ。始めてここに来たときはそれこそモンスターやら山賊モドキが襲ってきたものの、そんなもの当の昔に掃討済みだ。


 となると考えられるのは僕たちのRWの情報が漏れて誰でもログイン出来るようになった。って事だけど……。


 と、僕はそんな事を考えながら、着の身着のままブリーフィングルームへと向かったのだった。









ーーーーーーーー






『私の銃を返してくださぁーーい!! さもないとこんな基地吹き飛ばしますよぉ!』


 と、この基地に向かって叫ぶのは、真っ赤なマントを羽織った変な人だった。

 不必要なほど、というかどう運用するのか聞きたくなるほどの火器に身を包んでいる。左右の腰にアサルトライフルらしき銃を一挺ずつマウントし、背中には無誘導ロケットランチャーを背負っている。

 そして僕らに向けてグレネードランチャーっぽい大きな銃を向けていた。


 推定総重量30キロ。これに弾薬等々を体に巻き付けているから武装の重さは50キロを軽く越えるだろう。


 バカじゃないかな。持てばいいってもんじゃないよ。


 僕は半ば呆れながらブリーフィングルームのマイクに手を伸ばした。


『えー。鉄菊さんかな? その重そうな銃を下ろして。入ってきていいよー』


 と、僕が言うと銃はしっかりと構えたまま彼女はノシノシとこちらへと向かってきた。


「……あの武装が暴発してもやだし、ちょっと僕あれ取り上げてくるよ」


 困ったようにしている東藤さんへ向けてそう声をかけて、僕はブリーフィングルームから出ていった。


 はぁ。待ち合わせ時間までまだまだ早いよ鉄菊さん。

 今やっと午後五時を回った辺りで、弓佳ちゃんすらまだ来ていないって言うのに。真面目なのかバカなのかイマイチよくわからない。


 そして誘われるままに敵地にノコノコと入り込んで来るしなぁ。もう少し警戒心というものをですね……。


 なんてことを思いながら僕は彼女の元へと足を速めていった。









 

 

 

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