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翌、日曜日。休日だというのに、命は朝六時に起きていた。
厳しい実家暮らしから抜け出して三年が経とうとしているのだが、長年続いた習慣と言うのは抜けず、自然とこの時間に目が覚める。
実際一人暮らしで学校に通う身に取ってはありがたい生活習慣であるので、出来るだけ崩さないように保ってきた結果でもあった。
「よっし、やるか!」
そしてその生活習慣を利用して先日始めたばかりのゲーム、ウィクトリアオンラインをやろうとしていた。
とは言え相棒である祐介とは今日も十二時頃からの待ち合わせだ。
出来るだけレベル帯は揃えたいので、この時間にレベル上げをするつもりは無い。では何をするか、と言えばスキルのレベル上げだった。
どうもウィクトリアオンラインのスキルは、キャラクターのレベルが上がった際と取得しているスキルを使用した際に経験値が加算されレベルが上がる仕組みになっているらしい。
そして命の作ったキャラには、戦闘ではまず上がらないスキルがあった。
「よっし、ピザは十一時に予約して、念のためその十五分前にはログアウトするようにするか」
手早く準備を整え、ゲームの機能の一つであるタイマーをセットする。
「システムスタート!」
呟く言葉と共に、命は意識をゲームの世界へと飛ばした。
ふっと目に飛び込んできた光に、咄嗟に目を閉じる。ゲームの世界だというのに眩しいと感じるのだから凄い技術だ。
この世界の住人であるメイとなった命は、すぐさま街から出ると近くの森に向かった。
流石にこの時間になると、サービス二日目でも人影は少ない。それでも昨日よりは、という但し書きがつくが。
今なら多少初心者エリアでレベル上げも出来るだろうが、そこは我慢して目的の森に入る。
そこからは根気の作業だ。
「鑑定」
声に出しつつ、スキルを発動して周囲のものを確認しまくっていく。面倒な事にこの鑑定、対象を指定……つまり意識しないと発動しないのだ。
その為漠然と発動しても不発に終わる。故にそこら中に生える草木を見ては鑑定を繰り返し使う。
大抵は役に立たないものなのだが、暫く探すとようやく使えそうなものを発見した。
RPGで定番のアイテム薬草だ。そのまま使用した場合、自然回復量上昇(微)という微妙な効果だが、無いよりはましだろう。すぐさま採取スキルで回収する。
もしかしたらHP回復ポーションとかの材料かも知れないが、それは調合スキルなどを持っていないとわからないので、一先ずはインベントリの肥やしだ。
単体では非常に微妙な効果ではあるこの採取スキルを、メイがどうして取ったかと言えば、それは召還獣の為だった。
「ってそうだ。折角だし召還術のレベル上げもしておくか」
思い経ったら即実行と言わんばかりに、メイはウィスプを召還する。現在の召還術のレベルだとこのウィスプしか召還出来ない。
「さて、俺は採取するから一緒について来てくれ。んでお前の食えるもん……食えるもんあるのかな? まぁ、いいや。何か気になるものとかあったら教えてくれ」
そう、召還獣の餌やりのためだけに採取スキルを取ったのだった。
明かりの変わりになるくらいしかできない鬼火を従えて、メイは再び鑑定、採取の続きを行う。
多種多様な草木、落ちている小石、木の実やきのこなど手当たり次第鑑定して行く。
「……なんか、疲れてきた」
一時間も続けたところで限界が訪れた。
似たような景色の続く森の中で、延々と木の実や茸採取、そして草むしりを続けていれば精神的に疲れるのも仕方が無いだろう。
単調な作業に次第に飽きてきたので、メイはふと思いついた実験をしてみる事にした。
まずは採取の方法を無視してみることにした。
この採取スキルは、指定アイテムの採取方法を教えてくれるスキルだ。例えば直接素手で触れないようにするだとか、根元で切り取るだとか色々あるのだが、それを無視したらどうなるだろうか、という実験だ。
少し歩いたところで丁度良く薬草を発見した。
薬草の採取の仕方は根ごと掘り起こすというものなのだが、気にせず引きちぎってインベントリに放り込んで見た。
この場合、薬草は品質(最低)で保管されていた。一応適当に採取しても、拾えるは拾えるらしい。
続いて何回も採取して見慣れてきた薬草っぽい草が生えている辺りの植物を、何も考えずに鑑定なしで根ごと掘り返してインベントリに放り込んでみたところ、全て雑草としてインベントリにしまわれていた。
これを再度取り出して、鑑定してみると一つだけ薬草が混じっていた。どうやら採取する人物がきちんと認識しないと全て雑草として扱われるらしい。
「中々興味深い結果だな」
思いつきで試して見た実験だったが、予想以上に面白い結果になった。
これはすなわちプレイヤーの主観によって物事が変化するという事だ。つまりこの世界の事をきちんと知らなければこのゲームは本当の意味で楽しめないってことなのだろう。
もしかするとこうした情報を得る事によって魔法やアイテムの効果が増したり、特殊なイベントが発生するかもしれない。
「まぁ、今はただの可能性だけど、覚えておいて損はなさそうな情報だよな」
それならば召還獣は仲良くすればするほど力を貸してくれるのだろうか?
そんな事を考えて傍らに浮かぶ鬼火をつつけば、くすぐったそうに炎が揺らめくだけだった。
「とりあえず、役に立つかは別として色々採れたな。順調にスキルレベルも伸びてるし、もう少し頑張りますか!」
気合を入れなおして、メイは森の中に踏み込んだ。
「クルルルルッ!」
そんなメイの耳に何かの鳴き声が飛び込んできた。




