410 友達のレベル 下
「撮って撮って! 真希ちゃんも!」
とか、
「本当に、お世話になりましたー」
とか、
「もう卒業なのねぇ」
とか。
岳だ。
色々な言葉が最後のホームルームも終わった後で色んな声が飛び交ってる。
それを見ながら、オレはちとはみ出た気分でジャングルジムに寄っかかってたりする。
……いや、断じて悲しい子じゃねーぞ。単に翔が、翔の母さんに先生とのツーショット撮ってもらってるのを待ってるだけだからな。
修也? そっちは別の先生から卒アルに何か書いてもらってる。『卒業おめでとう』的なことを。
卒アルの最後の白い所って、メッセージ貰う所だったって事をさっき知った。でも知っててもきっと持ってこなかったな。重いじゃん!
「高山さん、岳くんと一緒に撮ってあげようか? 後でデータ送るよ」
母さんはちゃんと来てるし、ちゃんと見つけた。でも母さん、カメラも携帯も忘れたんだってさ。
取りに帰る? おいおい、兄ちゃんも姉ちゃんも、オレや多分光だって基本はめんどくさがり屋だぜ。母さんがめんどくさがりじゃねぇ理由が何処にあんだ。
「あら~、いいの~? ならお願いしようかしら~」
「もちろん。ハイ、チーズ……」
準備早ぇな!?
「お返しに翔くんと一緒に撮るわよ~。カメラ貸して~」
「えー! いいよ!」
おい翔、逃げんなよ。母さんから逃げられると思ってんのか。すぐ捕まったろ?
「折角の卒業式でしょ~! ねぇ~?」
「そーよー。撮ってもらおうよ」
「ハイ~、チ~ズ~」
翔の奴、なんだかんだでカメラに笑みは浮かべんのな。
「岳くんと一緒に撮る?」
「岳ー」
自分の母さん以外の時は遠慮しねーのな。
「ハイ、チーズ……」
「修也くんと奈那子ちゃんは~?」
流石にもうメッセージ貰い終わったよな? えぇとー。あ、すぐそこに居た。
「修也ー! 奈那子さーん!」
「翔の母さんが写真撮ってくれるってよー!」
あっさり来たなー。一年前に比べるとすげー進歩だ。
そんなで撮ってもらってる内に、クラスメイトで結構話す奴等……里山とか、和輝とか数人。を見つけて、その母さんや父さんに誘われた。
誘われる、断る理由は無い、よし行こう。
「……なー和輝、何でネクタイ頭に巻いてんだ?」
酔っ払いけ?
卒業式なんだから、皆それなりの正装してる。修也はスーツだし、翔は中学校の学ラン。奈那子さんは春らしい綺麗なワンピース。
オレのはお下がりだけど。ピッタリで着心地もいいから全く文句はねーけどな。
で、和輝は自分のしてたネクタイを、まさに酔っ払いのするように頭に巻いてたんだ。太一とか健太とかもおんなじことやってるし。
「どーせなら修也、お前もやれよ」
「お前がやれよ」
「オレはネクタイねーもーん」
元々無かったし、あっても付けねーな。苦しそうじゃん。ジャケットの中はシャツとセーターだけ。
「はいはい、喧嘩しなーい。ハイチーズ」
喧嘩じゃねーもん。オレが一方的に修也からかってるだけだ。少なくともオレはそう思うな。
「あ、居た居た」
あれ? 姉ちゃん?
「なんで居んだ?」
「来たから」
そりゃそーだ。……いや、そういうことを聞いたんじゃねーよ。
「おかーさんが携帯もカメラも忘れてたから。気を利かせてわざわざ持ってきてあげたんだよ?」
…………えーと。
「ありがと」
「よし」
でも理由は絶対『暇だったから』だな。
「ふーん、意外と友達多かったんだ、岳って」
「以外って何だよ!?」
「三人しか家には来ないもん。あ、いや、璃々は一回来たか」
璃々はたまたまで、その三人しか友達居ねーんだ……って、思い出させんな!
「あれ? 友達じゃなかった?」
えーっと……。
「リリは友達だよォ!?」
里山は一回でも話した人皆友達、なんだろ。
「オレだって!」
和輝? 何の対抗心だ?
「オレも、よくドッジ同じチームだもんな!」
太一、それ関係あんのか!?
「岳ー、おれは友達だよな?」
健太は知り合い認識だったけど……。えぇと。
『おれ等はー!?』
修学旅行のA(安形)B(坂東)C(栗山)D(出川)E(遠藤)……。こいつ等も知り合いだと思ってたんだけどなー。
……ところで、なんで袴姿の坂東以外は皆頭にネクタイ巻いてるんだ。
姉ちゃんがどういう意味なのかはともかく、苦笑した。
「で、岳はー? 向こう友達って言ってくれたんなら、ちゃんと返さなきゃ」
あー、もういい。基準とかもうどーでもいい!
「今一緒に写真写った奴は友達だよ!」
なんか嬉しかったから。
『一年ごと』か『卒業ごと』にでも区切って一度終わらせないと、完結させる機会を失ってしまうと思いました。
なので『ただいま暴走中!』は一度ここでお終いです。
ですが、明日からは主人公を忍(だったんです、一応)から岳にして、内容としては『暴走中!』と同じようなものを書いていきたいと思います。
タイトルは『ただいま迷走中!』です。迷走してどうするよ、とは思いましたが、思いついたのはコレだったんです。
お気に入り登録、感想、評価、とても嬉しかったです! ありがとうございました!
めちゃくちゃやってるだけでしたが、『迷走中!』も呼んでいただけたら幸いです!