52. ニウエルさんとマーレとユリの対話
新たな感想とポイントとか頂けてとてもうれしかったのですが、すみません。ご指摘頂いてた多過ぎるという対話シーンです。。
今後もうちょい改善、していければ、いいな・・・
※キャラクター表とかも、その内掲載します。
アハバーラタさんとゴンドレーザさんとの通信を切り、エグゾースさんとイザールさんには割り当てた個室へと監視役と共にお引取り頂いた後、ラシェルさん他『間の大陸連絡会議』とも言える面々と集っていたのとは別室へと、マーレとニウエルさんに私は連行された。
「賭けてもいいけど、あのゴンドレーザっていうのも、あなたの関係者でしょうね」
マーレに指摘され、私が否定しないでいると、私がどんな状態にいるのか既にマーレからある程度説明を受けたニウエルさんも賛同した。
「99回の転生の間に、一回につき最低一人は追っかけられるような誰かをこさえてたのなら、軽く百人は越えそうね」
否定できないのでさらに黙っていると、マーレはさらなる地雷原に踏み込んだ。
「それで、あなたは、99回の転生の間に出来た関係者じゃなくて、ユリの最初の生の関係者って事でいいの?」
「そうなるみたいね。紗由理があの小谷裕花に99回生まれ変わっても彼女だけを愛するなんて誓いを立てて実践してたなんて、にわかには信じがたいけれど」
「達成目前だったんだけどね」
「クェイナ、ゴブリンの女帝に躓いた、か。ユリ、クェイナは関係者じゃないの?」
「その可能性は高い筈なんだけどね。まだ思い出せてないだけかも知れない」
「それで、ユリとあなたの元の関係を聞いておいてもいいかしら?」
マーレがニウエルさんに啖呵を切った。
「元のあなた、小谷裕花が女神になったとかも信じがたいんだけど、そうね。私はあなたの後に紗由理に付き合ってもらえる筈だった誰かよ。その約束は不履行にされてしまったけれど」
「つまり、それだけユリは見境無かったと」
「そう見えた事は事実だけど、相手を選んではいたわ。紗由理とお近づきになりたいとか、親密な関係になりたいって子は、常時三桁を軽く越えてたから」
「わ、私はそろそろラシェルさん達の話し合いに戻ろうかな!ほら、私ってばユリエールの代表代行みたいだし、ゴンドレーザさんが来た時の準備も整えておかないといけないし!」
最初の生の情報は確かに貴重で重要だったけれど、マーレという女神当人の写し身にそのまま伝えてしまってよいかどうか悩ましかったし、何より話の流れ的に自分の首が絞まっていく将来しか見えなかったから、逃げ出そうとした。
「どこに行くつもり、ユリ?西岸の帝国兵との話はついたし、少なくとも常識的な速度で移動してくるゴンドレーザさんがこちらに到着するまでの数日は、ゆっくりお話をする時間くらいは取れる筈よ」
マーレは言いながら、部屋全体を結界で覆ってしまった。不滅のアンデッドの皇帝、ダンダニルでさえ自力では抜け出せなかったという品質保証付きの。今の私でどうにかしようとするのは、可能だったとしても例の歯車が回ってしまう危険性があった。
「外交的な話は、兄のラシェルや父のアストランザが相手の司令官達と進めているし、ゴブリン側で統率取ってくれてるセピアスさんにも連携は取っているから問題は無い筈よ、ユリ」
扉に向けて腰を浮かせていた私だったけど、ニウエルさんとマーレの笑顔の圧に負けて腰を再度落ち着かせた。
「それで、あなたに順番が回って来なかったのは、どうしてなの?」
マーレはど直球で核心を突いた。ニウエルさんは憶さずにライナーで打ち返した!
「紗由理が、死んでしまったからよ。あなたは覚えていないの?現場に居合わせていたのに」
マーレが問いかける視線を向けて来たので代わりに答えた。
「マーレには、女神になる前の記憶は無いんだよ。最初の生の記憶はその中に含まれるし、私にも最初の生の記憶は無い。というかつい最近まで無かったし、今でも部分的にしか思い出せていないよ」
「・・・あなたが、今までに再会した事があるか尋ねてきたのと、何か関係があるのかしら?」
「そうだね。99回も転生を繰り返してきてるって思い出してしばらくしてからだったかな。以前の転生回にも縁があった人達と再会してるって思い出し始めたのは」
「私も、今日になるまで、あなたと縁があったなんて知らなかったというか、思い出せていなかったしね」
ニウエルさんはテーブルの上に乗せられていた私の手に彼女の手を乗せて尋ねた。
「教えて。改めて、あなたが今どんな状況にあって、どこまで思い出しているのかを」
マーレは面白くなさそうな顔をしていたが、貴重な、女神になる前の生を知っている存在という事もあり、看過してくれたので、私は知る限りを語った。その締めには、
「たぶん他にもいるだろうけど、最初の生の関係者は、というかその記憶を保っているというか思い出した存在は、ニウエルさんが初めてだよ」
「・・・嬉しい」
ニウエルさんが私の手を握る手に力を込め、涙腺を緩ませたところで、マーレが咳払いをした。
「う、うん!それで、紗由理が死んだと言いましたね?私もその場にいたという事は、老齢などではなく、不慮の事故か何かだったのですか?」
「私が人から聞いて、自分でも出来る限り調べた結果から言うと、あなた、小谷裕花が狙われたのを、紗由理が庇って、・・・亡くなったみたい」
「もしかして、駅のホームで、電車が入ってくるタイミングで突き落とされた?」
「そのようね。でもどうして分かったの?」
「私が小暮百合となってから、初めてこの世界と行き来するようになったタイミングで起きたイベントだったから。始めの生の事を夢見た時も、たぶんそうなんだろうなぁと何となく思えたシーンがあったし」
「その時の事を調べたといいましたね?犯人は誰だったのです?」
「紗由理のその他大勢の取り巻き数人よ。一人だと怖気づいてしまうかも知れないのを同士で固まることで自分を奮い立たせていたみたい」
「動機は、嫉妬?」
「小谷裕花を亡き者にすれば、自分達も相手にしてもらえる筈だった。そう供述してたと思う」
二人には言えなかったけど、彼女達を暗にそうほのめかし動かすことが出来たのは、たぶん、一人しかいなかった筈で、私にはそれが誰か心当たりがあり過ぎた。が、それは私だけではなかったらしい。
「そんな事が約束できるとしたら、当人しかいないでしょうね」
「あの時のあなたは取り乱しててまともな会話は成立しなかったけど、そうね。私もそう感じていたわ」
「ユリは、当時の紗由理は死にたがっていたの?」
ニウエルさんは首を左右に振ってから理由を語った。
「いいえ。真意は別のところにあったでしょうね」
「別というのは?」
「紗由理は、何でも出来た。逆に言うと、自分に出来てしまう事にはそれ以上の興味を抱けなかった人なの。生きる事に飽きて死にたがってたというのではないけれど、一度死んでからでしか出来ない事に挑戦する為だった、とか?」
「何よそれ?転生のあてとかが無い限り、単なる自殺行為に終わるだけじゃない」
「普通なら、そうよ。でも、今のこの状況からして、紗由理が意図したものじゃないと私には言えないわ。むしろ、紗由理が意図したからこそこの状況になっていると思うもの」
「でも、ユリは、元の紗由理は、女神エリュタリアに愛を告げ、99回の転生で愛を貫くという試練を受ける事になったのよ?」
「そこが、私の知ってる紗由理とつながらないのよね。むしろ、自分が誰かを愛せるかどうか自分を試してるような人だったから」
二人の対話を聞いていて、思う事があった。
試練は双方に課されていたと思う。でも、女神であるユウちゃんがその試練を意識しているようなそぶりは感じられなかった。そして自分がわずかにしろ思い出した大野紗由理という人物の性格というか性根からすれば、自分自身の性格や志向までいったんリセットしていた可能性が高い。そうでないと楽しめないというどうしようもない理由はともかくとして、そうしないと女神となった小谷裕花を愛し続けるだなんて無理だから。
夢の中で感じた限りでは、大野紗由理という人物の感情のどこにも、小谷裕花という人物への愛情は感じられなかったのだ。
小谷裕花が女神となった経緯も、転生した私が女神を愛するようになった経緯も不明だけど、いったん死ぬために裕花や取り巻き達の心情を操り、目的を達し、最初の転生を果たした。それ系の小説なら事前予約なんてありえないけど、でも・・・
「何でも出来る・・・、万能・・・、人間を神様に出来るのは神様だけ?もしかしたら・・・」
「どうしたの、ユリ?」
「また何か思い出したの、紗由理?」
いろいろと話し合っていたのを中断した二人に、まだ整理できてない思い付き的な考えを伝えた。
「思い出したってわけじゃない。けど、裕花が神様になれたのなら、私もたぶん、て感じ。あの一万人の兵士を片付けた落とし穴を作る時にね、もしそんな事が出来たら、まるで神様みたいだなって思ったんだ。で、やってみたら出来ちゃって、その時私の中で、決して元に戻せない歯車みたいな何かが噛み合わさった感覚があったんだ」
「確かに、あの瞬間に領都周辺の地面に浸透した魔力量は莫大だった。何千人て魔法使いを連れてきても集められないくらいだったのはたぶん間違い無い」
ニウエルさんが肯定すると、マーレも議論を進めてくれた。
「じゃあ、ユリも神に近づいてるって事?」
「かも、知れない。それでね、たぶん間違い無いけど、裕花を神様にした誰かと、私を今みたいな状態に導いた誰かは、違う存在みたい」
「つまり、あなたも、そういった誰か、神様なんだろうけど、につながりとか心当たりがあるって事?」
「まぁ、おぼろげだけどね」
何度かメッセージ的なものは受け取っていた。はっきり出会ったのを覚えているのは、あの教会で祝福を授けてもらった時のくらいだけど、きっと忘れているか、忘れさせられているか、自分でそうする事を選んだのか、まだいくつかの可能性が残っていた。
「その誰かは、あなたを神様にしようとしているの?」
「そうかも知れないし、元の私がそうなろうとしていたのかも知れない。どちらもか、どちらか片方という可能性の両方があると思う」
「とんでもない話ね」
ニウエルさんは呼び鈴を鳴らすとメイドさんを呼びお茶のお代わりを運ばせ、退出させてから続けた。
「紗由理。あなたは、あなたが神様になろうとしたきっかけというか、動機みたいな願いがあったかは覚えているの?」
「何でも出来るというなら神様にもなれるのかな、とかってバカみたいに単純な動機かも知れないし、私が忘れてるだけで何か深刻なきっかけがあったのかも知れない。今はまだわからないかな」
「人たらしというか女たらしのあなたなら、そういった動機かも知れないけどね」
「自分がそうしていた動機もまだ分からないから、何とも言えないかな」
「そうね。あなたは、誰にでも好かれていたけど、あなたは根本的には誰にも関心が無いような感じもしたもの。だからこそ、私だけはそんなあなたの特別になりたいってみんな思っていたのかもだけど」
「否定もできないかな」
そこからはしばし他愛も無い雑談を挟み、ラシェルさん達の会議に合流してガーランド帝国の捕虜の扱いをどうするか話し合ったり、講和をどんな形で実現するかを検討したりしてる内に六日ほど経って、ザンネール閣下とイグニオ爺さん一番弟子に付き添われたゴンドレーザさんが領都に到着した。
まぁ、予想してた通り、関係者だったワケだけど。
到着するまでの幾晩かに渡り、ニウエルさんの猛攻があった。マーレとのせめぎ合いでニウエルさんがクェイナみたいな何かをされてしまわないかはらはらする数幕があったものの、私の最初の生の関係者で、裕花の後に相手をしてあげると約束したまま、果たせずに転生して転生を繰り返すようになってしまった点を、
「女神の化身なのに、約束くらい守れないの?」
と痛いくらいに突かれ、
「ユリにはクェイナって身重にした相手がいるのに、いいの?」
と判断のボールをこちらに回してきたりした。まあ確かに約束したのはマーレ(裕花)ではなく、私(紗由理)だものね。苦し紛れに、
「それ言ったらマーレの相手も出来なくなるけど」
と言ったら、
「私は運命の相手だもの。クェイナよりもずっとずっと前からのね!」
と開き直られた。
その言葉で、私の中で新たな記憶の扉は開きはしなかったものの、推測はついた。たぶんクェイナは、そのさらにずっと前からの、今は封じられてる記憶の中にいる誰かなんだろうと。
で、結局ニウエルさんとは、二人で添い寝するくらいで我慢してもらう結論となった。いや、ほんと、そういう気持ちも無いからね。何とか説得したけど大変な夜だった・・・。
2020/9/3 大陸西岸からメイケン家領都まで二日だと近すぎると思い、移動距離(日数)を調整しました。




