34.ゴンド君との相談。思い出せないことの判明
ゴンド君視点の一章です。
俺の名前は、権藤和明。高校二年の十七歳。年齢イコール彼女いない歴な全国どこにでもいる受験生の一人であり、異世界転移を心底待ちわびてるありふれた一人でもある。
起きたらいいな。でも起きるわけないな。そんなあきらめの中で学校と予備校と家の間を往復する毎日に転機があったのは数ヶ月前のある日。クラスメイトの女子の一人が、駅のホームから転落する事故があった。
無傷で入院し、すぐに退院したと聞いたけど、実際には、異世界に転移していたらしい。その後もランダムに行き来しつつ、打ち明けられた時には姿が変わってた。具体的には、筋肉むきむきなマッスルパワー全開!な女子から、ちょっと筋肉付きすぎなくらいな美少女に。
異世界転移なラノベが好きな存在としてアドバイスを求められたりもした。一緒に行きたいとも伝えたけど、どうやらそれは無理だったらしい。最後に会ってから数日学校に来なくなって、事情を知ってそうなクラスメイトの一人、彼女の親友に訊いて判明した。
年の瀬も迫ってきて独り身には染みる街の情景にうんざりする季節。冷たい空気に震えながら予備校に向かう自分のスマホのSNSに新規メッセージが着信した。
異世界転移を繰り返してる小暮さんからだった。
「急いで相談したい事があるの。会えない?」
というメッセージに、
「もちろん!どこで会う?」
と即レスを返し、予備校近くのファストフード店で落ち合う事にした。
小暮さんは、また外見が変わっていた。自分の記憶にある元々の姿からはもはや完全な別人と言ってよい。最後に会った女の子らしくなったという姿から、凛々しい雰囲気の美人さんになっていた。しなやかな筋肉質のモデルさんと言っても信じる人はいるだろう。
その証拠に、小暮さんはパーカーとダウンジャケットを羽織り、フードを二重にかぶっていたから顔は良く見えなかったけど、それでもどこの芸能人かモデルさんだ?という感じで周囲からちらちらと視線を向けられていた。
だから一応、念の為、小声で最初に確認した。
「ユリリンなの?」
「そうだよ、ゴンド君」
「見違えたね・・・」
「完全な別人だよね、もう。こっちに落ち着く事になっても転校は確実だね。はは」
美人になって喜んでる雰囲気は無くて、焦りと投げやりなあきらめが入り交じっている表情だった。
自分が望んで整形手術受けて外見を変えたのならともかく、当人として認識されないくらい誰かに外見を変えられてしまったら、戸惑いや憤りしかないかも知れない。
長い睫毛と腰辺りまで流れ落ちるまっすぐな黒髪に見とれながら、コーヒーを手に小暮さんの前に座り、尋ねた。
「何があったの?」
「前にさ、世界設定とかは終盤にならないと明らかにならないとか言ってたでしょ。あんな感じの事があったの」
「てことは、神様みたいな存在との接触があったって事?」
ユリリンはこくりとうなずき、話してくれた。どうして転移したのか。何が目的とされていたのか。そして99回目の生と女神との約束という信じられない話まで。
信じられないよ。当然な筈のそんな一言はどうにか呑み込んで、別の一言を返した。
「それで、ユリリンはどうしたいの?」
「迷ってる・・・」
「その、99回転生してでもゲットしたいって告白した女神様か、それともクェイナさんのどちらを選ぶかで?記憶が戻ったっていうなら」
「そう。本当なら迷う余地なんて無い筈なんだけどね。でも、そう簡単に割り切れなくて」
「両方、は無理なん?」
「許してもらえないだろうね。私も、そういうつもりは無いし」
「でもさ。女神様が相手でしょ?しかもたくさんいるうちの一人って感じのじゃなくて、世界の創造神みたいな絶対的な存在なら、ユリリンに選択肢なんてあるの?」
「たぶん、ね。無かったら、最初から出会ってただろうし、今回もこっちに戻って来れなかったり、こうしてゴンド君に相談も出来なかっただろうから」
自分の彼女いない歴を鑑みても、恋愛方面から自分がアドバイス出来るとは思えなかったので、相談の切り口を変えてみた。
「でも、こっちに戻ってきたって事は、向こうなら無理でもこっちなら出来る事もあるって思ったからじゃないの?」
「そう。なんだけど、実際何が出来るかっていうと、かなり自信が無い・・・」
「その、向こうとこっちとで同じ存在な誰かは」
「言えない。ゴンド君に何があっても守れるとも思えないから」
「仕方ないか。んで、神様への対抗策か。確かに、むずかしいね」
「だよね。一縷の望みがあるとしたら、向こうの世界の創造神だとしても、こっちの世界の創造神ではないって可能性じゃないかと思ってるんだけど」
「その根拠は?」
「もしもその人が自分との事をそれなりに楽しみにしてくれてたのなら、自分の外見とかを最初から今みたいにしてたと思うんだ。クェイナという存在が邪魔にならないよういろいろ調整も出来ただろうし」
告白する前に振られた事もあるし、と教えてくれた。うん、それは、凹むよねと同感した。しかもその後で出会った人との関係をとやかく言われても困るし、百回近く生まれ変わって告白し続けても振ってきたのはそちらだろう、とかね。
「一番簡単に思いつくのは、他の神様に助力を求めるとか」
「神様の知り合いなんて他にいないけどね。アンデッドへの対抗手段も探しにきたから、どのみち神様頼みは模索しないとなんだけど」
「この世界の神様はいるんだかいないんだかわからないしな」
うーん、と二人して頭を抱えてみて、自分にふと思い浮かんだ事を言ってみた。
「目に見えるご加護とかっていうと、やっぱお守りとかになるんじゃね?」
「この世界だと御利益とかあるかわからないけど、向こうの世界に持ち込んだ物はけっこう効果が激しくなるから、ありかも」
「あとはありがちだけど、十字架とか聖水とかかな」
「御札とかもかな」
「禅寺とかで修行してみるとか」
「教会でお祈りしてみるとか、か。とりあえず何もしないで悩んでるよりはマシだろうね。ありがと、ゴンド君。また何かあったら連絡するよ」
そして小暮さんが立ち上がり、フードを深く被って去ろうとした時、ふとした疑問が浮かび上がって尋ねてみた。
「そういえばさ、過去の記憶が蘇ったって言ってたけど」
「うん?」
「その女神様に告白する前の記憶はどうなん?」
「・・・・・・・き、気づかなかった」
「告白、それも99回生まれ変わってもなんて誓うくらいだから、大恋愛っていうか、片思いだったにしても、相当好きだった筈だろ?どんな馴れ初めだったとか、記憶に無いの?」
ユリリンはしばし瞳を閉じて必死に思いだそうとしてみたらしいけど、あきらめたように言った。
「だめ。何も思い出せない」
「じゃあ、故意に制限されてるのかも」
「誰にって、あからさまか」
「神様にアテが無ければ、その記憶に鍵があるかもね」
「ありがと!助かったよ!」
ユリリン、というかもう記憶の中の当人と違いすぎて、小暮さんと呼ぼう。小暮さんがいなくなってから自分は予備校に向かった。
予習の時間をつぶしてしまったけど後悔は無い。学校以外のどこかで、あんな美人さんと二人きりで話せる機会なんて、そうは無いだろうから。
さて、あの相手って、やっぱり・・・。とか思い当たりはあった。でも、小暮さんが言明避けたのならヤバい相手なのも確かだから、変な探りとか入れない方がいいよな。でも、小暮さんとさらにお近づきになるなら、とか考えかけて、そもそも男に興味無いんだっけかと思い出して、気持ちを切り替えて予備校へと俺は戻った。
とある物語を読んで面白かったので、こんな感じの章(閑話)が増えていくと思います。




