戦闘機
「ちょ、ちょっと待ってよ鬼雨! 山を丸々燃やした化け物にどうやって行くの?」
リリィは不安そうな顔で、鬼雨を見つめてきた。
「そりゃ、陸が駄目なら空からだろ。行くぞ」
「え? あ、待って!」
そう言って歩いてゆき、着いたのは飛行機がたくさん並ぶエプロンと呼ばれる場所だ。
「ねぇ、鬼雨。まさか、これで行くの?」
「あぁ、そうだ。さっきバッチを見せたら乗っていいってさ」
どれが良さそうか選んでいると、後ろを付いてきたリリィが立ち止まって聞いてきた。
「……無謀だと思わないの?」
ポツリと一言。どこか絶望した声で話してきた。
「なんだ? いつものリリィじゃないな……熱でも出たか?」
「なんで、わからないの!? 鬼雨、あなたがこれまでやって来れたのはたまたまなんだよ! けど、今回は違う!! 力も、強さも何もかも、相手の方が上! 勝てるわけないでしょ!」
リリィは訴えかけてきた。だが、そんなことは自分でも分かっている。それでも行かなければならいない。
なぜなら――
「だったら、俺たちは何のためにここにいる?」
「それは……任務で……だけど!」
「……リリィの言いたいことはわかる。だが、ここから逃げたって何も変わらない。もう、かすみの二の舞になるようなことはしたくないんだ!……だから、俺は行くんだ」
思い出すのは自分の力の無さへの後悔。そして、白夜叉への怒り。
「だから、俺は行く。誰のためでもない、俺自身のために……」
「……わかった。だったら私も行く。どうせ、鬼雨は操縦できないでしょ!」
「ようやく、覚悟は決まったみたいだな。あと、こいつで行くぞ!」
鬼雨が選んだ機体にリリィは呆れたのか口を開けた。たぶん、心では笑っているだろうがそれでもリリィは笑顔で――
「へへっ。鬼雨らしいね……じゃぁ、行こっか♪」
機体に乗り込んで、スタッフ達に助けて貰いながら、誘導路を通り、滑走路へ。
「準備はいいか、リリィ」
「鬼雨こそ! 思いっきり飛ばしていくよ」
「あぁ、行くぞ。戦闘機で!」
滑走路につき、端っこにつかせてもらった。あとは、ここからスピードを上げて走り出すだけだ。
「リリィ、この空港を出た瞬間から全力でスピードを出して九尾に突っ込め」
「そんなことしたら狐火に捕まっちゃうよ?」
「山を一瞬で消した狐火は最低でも10000度。喰らえば一瞬で終わる。どの道、すぐに終わるなら突っ込んで行く方がマシだ」
「……わかった」
ただ、一言。これから死にに行く一言。だが、これだけ十分だ。
九尾との距離がわずが10kmちょっと。この距離を速度マッハ2の戦闘機が飛ぶ。
エンジンがかかり、スピードを出すアフターバーナーに火がついた。徐々に加速していき、滑走路から離陸していく。
「鬼雨!空港から出るよ!」
「あぁ、そのまま九尾の所まで突っ込め!」




