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短編集、web拍手の再録など  作者: 神崎みこ
web拍手再録/タイトルはcapriccio(http://noir.sub.jp/cpr/)さまより
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28 - 秋桜(少女とカミサマ)

「おまえが墓参りとは、殊勝なことだな」


赤子ほどの大きさの石が、ただ地面の上に置かれているだけの、墓標ともいえぬほど粗末なそれの前で男たちが相対する。

一人は、艶のある薄茶の髪を後ろで一つくくりにした、少年と呼べるほどの「男」。

もう一人は、こげ茶色の髪を無造作に後ろで伸ばしたままの「男」。

二人は一度みたら忘れられぬほどの美丈夫、と呼ばれるものたちだろう。

そして、男二人が普通の人とは違う、ということにも気がついてしまうだろう。

それもこれも人の子が存在すれば、の話ではあり、今はその判断を下すものはどこにもいない。


「うるさい」


少年は、花束を墓の前に置く。

男は、僅かな表情さえも動かさずに、彼がすることをただ見下ろす。


「まあ、でも、これはいらねーかなぁ」


あたりを見渡しながら、少年が呟く。

墓だと主張する置石は、ぐるりと花たちに囲まれている。

季節柄、今は秋桜ではあるが、四季折々に花たちが顔をみせるであろうことは確かなことだ。

数歩離れた場所には桜の木が彼らを見下ろし、あちこちに雑草とは思えない草木が植えられている。

そのどれもが適度に手入れをされており、長年放置された、といった風情にはみえない。


「おまえがやったのか?これ」


久しぶりの訪れに、少年が周囲の変化を問う。

彼にとっては、義務感だけで訪れるこの場所も、青年にとっては異なることを知っている。

あれからどれぐらいの月日がたってしまったのかはわからない。

だけれども、ここには「彼女」が眠っているのだから。


青年は、無表情のままあからさまに顔を背ける。

そんな彼の態度に苦笑し、少年は改めて墓の前で手を合わせる。

彼女をよく知っていたわけではない。

ただ、どういう経緯で青年とともにあり、そして朽ちていったのかを知っているだけだ。

そして、それ以降の彼がどうなってしまったのかも。

時折みせる狂気の火種が、無関係なものにむけられる。

昔は無関係を決め込んでいた少年が、ことさら事態の悪化を防ごうとしているのも、状況の変化なのだろう。

本来ならば、彼らはお互いにその境界を踏み越えるものではないのだから。



いつの間にか、青年の気配は消え、少年だけが取り残される。

立ち上がり、改めて周囲を見渡す。

一面の秋桜が目に飛び込んでくる。


「これなら、寂しくねーか」


少年の姿が掻き消える。

風に揺れる、秋桜たちを残して。

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