表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集、web拍手の再録など  作者: 神崎みこ
web拍手再録/タイトルはcapriccio(http://noir.sub.jp/cpr/)さまより
12/75

26 - 永遠に割れない卵(社会人、姉妹もの)

 今のこの気持ちはまやかしで、しばらくしたらきっといつもの私に戻る。

眠れば明日になって、明日になったらすぐに明後日になる。

そうしたら月日はあっという間にたって、やっぱりあれは嘘だったんだ、と、そう思える。

ちくちくと痛む胸に気がつかないふりをして、妹の話に付き合う。

もうすぐ花嫁になる妹は、身びいきを差し引いたとしてもとても綺麗だ。

充足感から得られるオーラは穏やかで、でも私の中のどこかがずきりと痛む。


「どっちがいいと思う?」


決めかねている電化製品のカタログを眺めながら、顔を上げずに妹が問う。

おそらく返事など期待していないのだろう。


「そういうことは旦那さんと決めないと」


いい飽きた台詞を吐けば、にっこりとした笑顔を見せる。

幸せそうで、幸せそうで、どこかでまたチクリ、と刺す。


「おねえさん、って呼ばれるのはやっぱりやだなぁ」


誤魔化すように茶化した言葉を呟く。

妹の旦那は小学校から大学までずっと同じだった、元同級生。

その縁で彼と妹は付き合い始めたのだけれど、今でもどうしてそうなったのかがわからない。

私の方が、ずっと付き合いが長いのに、と。


「うーん、それは向こうもちょっと悩んでるっぽいよ。やっぱり同級生をおねーさん呼ばわりは、ねぇ」


炊飯器のカタログに釘付けになりながら返す。

二人とも実家暮らしのおかげで、新規に買うものが多いらしい。

炊飯器一つとってみても、いる、いらない、機能性、と選択の基準は意外と多い。

どちらかといえば大らかな同級生は、そういうことは妹任せにしているようだ。


「まあ、苗字でいいんじゃない?」

「パパもママも同じでしょうが」


彼側の姓を選んだ妹は、もうすぐ苗字が変わる。

変わらない私の苗字を今までどおりに呼べばいい、と思いついたはいいが、即座に却下される。

確かに当分私は今の苗字で、当たり前だけど両親も同じだ。


「無難に名前にさん付けとか?やっぱり」


在学中一度も呼ばれたことがない下の名前を、彼の声で再現してしまい戸惑う。

そして、やはりどこかずきずきと痛む。

気がつかないふりをして押し込める。

この気持ちは、永遠に生まれてきてはいけない。

だから。


「そうね、それが無難よね」


返事を聞いているのか聞いていないのかがわからないほど、カタログに見入っている妹に呟く。

大丈夫。

私の、気持ちは、ずっとずっと奥の底に沈めておくから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ