第258話 アンタら終わりよぉ~ん♥
「――ぶはぁ! や、やっと地上に出られたわい……」
――王都城壁のすぐ外。
床下扉のように地面に設けられた隠し戸がバンッと開き、ノワールの髭面が露わとなる。
狭く暗く息苦しい地下通路を抜けて来たノワールは、既に疲労困憊。
その顔はとてもゲッソリとしている。
「おい! さっさとケツを上げぬか、この豚めが!」
そんなノワールの背後――具体的には尻の辺りから響く、リッチャの怒号。
ノワールとリッチャは這う這うの体で地上に上がり、地面に座り込んで大きく深呼吸した。
「「すぅ~~~……はああぁぁ~~~……」」
深呼吸、と同時に漏れ出る深いため息。
淀んだ空気が充満した地下通路を抜けて吸う新鮮な空気は、二人にとってそれはそれは甘美であった。
……が、ノワールもリッチャも、そんな美味い空気を存分に味わおうという気分には、とてもなれなかった。
「……これからどうするのだ、ノワール殿」
「あぁ? どうするって?」
「この後なにをどうするのかと聞いている」
「ハッ、知るかそんなこと」
そんな短いやり取りを経た刹那、プツンと両者の堪忍袋の緒が切れる。
「貴様ァ! それが雇い主に向かって言う台詞か!?」
「なにが雇い主だクソが! ここまで連れてきてやっただけでありがたく思え!」
月明りが照らす夜空の下、ギャーギャーと喚き散らす二人の中年男性。
もはや仲間も部下もいないのに、それでもマウントを取り合おうとする姿は、まるで痩せこけた二匹の野犬が餌もないのに縄張り争いを繰り広げているかのようであった。
「そ、それにな、俺は貴様などと違って、今後を心配する必要なんてないんだよ」
ニィッ、と笑うノワール。
その不気味な笑顔に、リッチャは困惑させられる。
「なんだと……?」
「俺には『薔薇色の黄昏』がある! 地位を失おうが財産を失おうが、何度でも取り戻せるんだ!」
両腕を大きく掲げ、ノワールは高らかに言う。
俺はお前なんかとは違うんだと、リッチャに見せ付けるように。
「今に見ていろ、すぐに再起を図ってやるぞ! そして俺を襲った奴らを、思う存分復讐を――!」
「――あら、『薔薇色の黄昏』ですってぇん?」
「……へ?」
「なんか面白そうなお話ね~。ちょっと聞かせてもらえるかしら~ん?♥」
突如ノワールとリッチャの会話に割り込んでくる、オネェ口調の男性の声。
その声がした方向へ二人が顔を向けると、そこには――
「「ア……アルベール国王……!?」」
「うっふ〜〜〜〜ん♥ アルベール・ヴァルランドよぉ〜〜〜ん♥ 私も会話に交ぜてぇ〜〜〜〜〜〜ん♥」
誰であろう、ヴァルランド王国現国王アルベール・ヴァルランドの姿があった。
クネッと腰を曲げておどけて見せるアルベールであったが、その背後には何十人もの重武装をした物々しい騎士たちの姿が。
いつの間にやら、ノワールとリッチャは王国騎士団に包囲されてしまっていた。
ようやく状況を飲み込んだ二人は顔を真っ青に染め、対するアルベール国王はおどけた態度から鋭い目つきになる。
「言っとくけど、抵抗しても無駄だから。もし逃げ出そうとすれば、騎士たちに両足斬り落とさせるからね」
「「う、ううぅ……!」」
「ノワール・ゲッツ、それとリッチャ・マッラ……。アンタら終わりよ。なんたって、このアタシの客人に迷惑かけたんだから」
ノワールもリッチャも、瞬く間に騎士たちに取り押さえられる。
多勢に無勢……というより、元から戦う力などないただの金持ちでしかない二人では、屈強な騎士たちに抗う術などなかった。
「リッチャの方はすぐにネワール王国へ強制送還してあげるわ。お兄様のヤークシャ国王が、断頭台を用意して待ってくれてるでしょうね」
そう聞かされて、ガックリと肩を落として絶望するリッチャ。
アルベール国王に捕まって本国へ送り返される以上、彼の運命はもはや一つしかなかった。
アルベール国王は続けて、実に悪い笑みを浮かべたままノワールの方へ視線を移す。
「んで……ノワール・ゲッツ――」
「ひっ……!」
「アンタ、興味深いこと言ってたわねぇ。『薔薇色の黄昏』がどうとか……」
細い指先に力を込め、グッとノワールの頭を掴むアルベール国王。
そして脅すように眼力を込め、ノワールに対して目と目を合わせた。
「知ってること、洗いざらい吐いてもらうから。アル王子やエステルちゃんにちょっかい出してくれた分も、キッチリ利子付けて尋問したげるから……せいぜい覚悟なさいな」
「ひ……ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッッッ!!!」
うっふ〜〜〜〜ん♥
次話で第2部・第3章完結よぉ〜〜〜ん♥
それと併せて〝ビッグニュース〟のお報せもあるから楽しみに待っててぇ〜〜〜〜〜〜ん♥
(そういえばせっかくオネェキャラ出してるのにうっふ~ん構文を使わせていなかったことに気付いたバケモノ作者の図)
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