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リピート・ヴァイス〜悪役貴族は死にたくないので四天王になるのをやめました〜  作者: 黒川陽継
間章Ⅲ

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196# 乱入

 全てパーだ——そう、ローファスは心の中で嘆いていた。


 全て上手くいく筈だった。


 地神による無茶振り——《邪竜》を滅ぼす件も、どうにか達成できる目処が立った。


 姫巫女の一族の《霊堂》に入り、地神と接触して《邪竜》攻略に必要な情報も揃えた。


 《霊堂》は姫巫女の一族しか入れないというしきたりがある為、一時的に現姫巫女であるタチアナと婚姻を結ぶ必要があったが。


 婚姻を結び、籍を入れる——即ち、女系である姫巫女の家系図にローファスの名が刻まれる事となったが、これは《霊堂》に入る為の必要措置であった。


 強行はタチアナと地神双方を敵に回しかねない為論外、秘密裏に忍び込むのも失敗した時のリスクが高過ぎる。


 だから婚姻を結んだのは仕方のない事、事が終わった後に腐れなく離婚すれば良い。


 ローファスはそう自分に言い聞かせてタチアナと正式な婚姻と結ぶに至った訳だが、別に一緒に生活してもいないし、当然男女の関係にもない。


 この三カ月、タチアナは籍を入れた事だしとあの手この手で既成事実を作ろうと誘いを掛けてきたが、ローファスはその悉くを躱わしていた。


 物語では《邪竜》が復活した問題の《竜王祭》に関しても、今回王国から来るとすれば記憶の無いアステリアに、精々アベルやメイリン、フラン辺りがくっついて来る程度だろう。


 リルカには事前に来るなと言い含めてあるし、フォルは記憶が無い以上、そもそもここに来る理由がない。


 もしアベルにタチアナとの婚姻関係がバレたとしても、事情を話すなり口封じするなりすれば良い。


 後は復活した《邪竜》をちゃっちゃと滅ぼして終わり——その筈だった。


 最悪の事態。


 なぜか、リルカとフォルが来てしまった。


 そして本当に理解不能なのが、ユスリカまで来てしまっている。


 何がどう転んだらそうなるのか。


 最悪のタイミングで、来て欲しくないトップ3が来てしまった。


 そして様子を見るに、何やらアステリアに記憶が戻っているように見受けられる。


 或いは何らかの要因で記憶を取り戻したアステリアが扇動してこの三人を連れてきたのかも知れないが、この際そんな事はどうでも良い。


 タチアナとの婚姻は、飽く迄も《邪竜》を確実に倒す為に仕方なく結んだもの。


 ごねられては面倒なのでタチアナには言っていないが、《邪竜》の一件が終われば解消する予定。


 離婚前提の短い関係である。


 全てを終えた後ですらできればこの三人には知られたくなかったというのに、よりにもよってまだ関係が解消されていないこの段階で来てしまった。


 なんだかんだで、フォルは説明すれば理解をしてくれるだろう。


 多少顔を曇らせるかも知れないが、それでも理解して納得してくれる。


 しかしリルカは駄目だ。


 あの嫉妬深い愛人は、タチアナとローファスが婚姻したと知れば間違いなく発狂するだろう。


 話し合いの余地はない。


 そしてユスリカはどうだろうか。


 彼女は、恐らくだが何も言わない。


 しかし何も言わないという事は、イコール何も思わないという訳ではない。


 間違いなく、何かしらを思い抱え込む。


 やはり駄目だとローファスは頭を抱える。


 話して解決するとは思えないが、それでもせめて話し合いをする時間が欲しい。


 しかし無情にも、今は闘技大会真っ最中。


 そして闘技大会が終われば、場所を《霊峰》に移して《邪竜》が復活予定の《竜王祭》が行われる。


 どう見積もってもゆっくりと話せる時間はない。


 いや——と、ローファスは思い直す。


 時間がないという事は、裏を返せばその暇がないという事。


 そもそもタチアナとローファスが婚姻を結んでいる事は、現段階で公にはされていない。


 当然の事。


 姫巫女たるタチアナと王国貴族たるローファスが婚姻したなどとなれば、国際的な影響は計り知れない。


 タチアナもローファスも立場があり、互いに決して軽くない責任を背負っている。


 こんな情報が漏れれば個人間どころではない、国家間を巻き込んだ大騒ぎとなる。


 国際情勢にだって多大なる影響を与える。


 故にタチアナとローファスが籍を入れたという事実はあれど、その情報は決して漏れる事はないだろう。


 少なくとも《竜王祭》が終わるまでは、そんなトラブルの種になりかねない情報は伏せておく筈。


 つまりこの婚姻は、ローファスが彼女達に言わない限り知られようもない事。


 であるならば、思っていた程の窮地ではないのかも知れない。


 ローファスはこの件に関して、口が裂けても言わないし、それにそもそも《邪竜》を滅ぼすまで彼女達の前に出る気もない。


 そう考えると、ローファスとしても思考に余裕が出てくるというもの。


 思い返してみれば、テセウスも開会式で表に出て来るという実に余計な事をしてくれていた。


 あんなものは予定になかった。


 しかもあの演説、完全にアベル達をおちょくっている。


 前回やられた事を相当根に持っているのだろうか。


 いずれにせよ《神》に至った超越者の一柱であるというのに、実に大人気ない話である。


 ともあれ、これ以上下手に動かれて場を乱されては困る。


 なぜかスイレンも帝国代表として闘技大会に出場しているし。


 テセウスの事だから計画に支障のない範囲でやってはいるのだろうが、下手にアベル達を刺激し過ぎて妙な行動を取られても面倒極まりないし、後で余計な事をするなと釘を刺しておこうとローファスは心に決める。


 《竜王祭》闘技大会準決勝、開始の銅鑼が鳴り響いたのは、ローファスがそんな事を考えていた時だった。


「降参する」


 試合開始直後、ローファス——タナトスが動くよりも先にスイレンが黒刀を捨て、そう宣言した。


 律儀にも両手を上げ、戦意が無い事もしっかりアピールしている。


 観客席からは困惑の声やブーイングが飛ばされた。


 タナトスは努めて剣闘士らしくスイレンに言う。


「…良いのか? 祖国の威厳を損ねるぞ、帝国軍人」


「貴殿の相手をしろという指示は受けていなし、何より負け戦をやる趣味はない。文句ならテセウスに言ってくれ」


 スイレンは肩を竦め、早々にドームから立ち退いた。


 その物言いは、まるでタナトスの正体を知っているかのよう。


 事前にテセウスから聞いていたのか、或いはスイレンの並外れた感覚によるものか。


 直感的に気付かれたのかもな、とタナトスは肩を竦める。


 何やらアベルにも気付かれたような反応をされていたし、タチアナといいスイレンといい、謎の感覚で正体を看破してくるのはやめてもらいたい。


 このタナトス形態(フォルム)は見た目、体格、声色、魔力の質を変えており、見た目や魔力からローファスであると見破るのは不可能な筈である。


 かなり高度で、完璧に近い変装。


 その上、密かに魔人化(ハイエンド)してもその魔力を外部に漏らさない優れもの。


 不意打ちにも使える。


 ボレアスに嗅覚で気付かれた経験も活かして呼吸以外の大気を遮断して完璧に近い密閉を実現し、これにより匂い対策も万全。


 この纏鎧式の魔法兵装は、ローファスの魔法技術の粋を集めたといっても過言ではない逸品。


 それをそうポンポンと見破られては堪らない。


 しかもタチアナ、スイレン、アベルの三人はそれぞれが別の要因で見破っている雰囲気なのも困りものである。


 何をどう改良したものかと研究者魂をくすぐられていた所で、メインドームを南北に別つ壁が下りた。


 それは北側の準決勝の決着——即ちアベルが勝利したという事。


 アベルはタナトスの正体に気付いているようだし、決勝で何か言われるかも知れない。


 さてなんと説明すれば計画に支障が無い程度に大人しくしてくれるだろうかとローファスが高速で思考を回していると——ふと、貴賓席のタチアナが徐に立ち上がり、メインドームへ飛び降りた。


 タチアナは猫を思わせるしなやかな動きで、音も無くタナトスの横に着地する。


 突然の姫巫女の行動に、観客は騒めき、MCのマーズもぽかんと呆気に取られている。


「何を——」


「まあ近くにおれ」


 直感的に距離を取ろうとしたタナトスの手を、タチアナはがっしりと腕を絡めてホールドした。


 一人の剣闘士としてこの場にいる以上、姫巫女を力任せに振り払う訳にもいかず、そもそもタチアナの竜の血からくる怪力によりそう簡単には引き剥がせない。


 側から見れば一人の剣闘士に親しげに密着する姫巫女の構図に、観客は「おお」とどよめきを上げている。


「何のつもりだ…こんな事、予定には——」


 小声でタチアナに抗議するタナトス。


 タチアナはニヤリと笑い、もう片方に持っていたマイクに向けて口を開いた。


「皆、楽しんでおるかな? いよいよ闘技大会も大詰め、決勝じゃ。ここで一つ、重大な発表をする」


「——!」


 ぞわりと、タナトスの内にいるローファスは顔を青くする。


 互いに凄まじい影響力を持つ者同士、流石にそんな軽率な真似はしないと踏んでいた。


 この婚姻に関しては国家間での話し合いは何もなされていない。


 そんな中での公表など、展開がどう転ぶか分からない、あまりにもリスクが高過ぎる行為。


 少なくとも、この国家的な重要イベントである《竜王祭》の期間中には馬鹿な事はしないだろうと高を括っていた。


 しかし見方を変えれば、タチアナにとって各国の要人が集まるこの《竜王祭》は、ローファスとの関係を知らしめるのに都合の良い場でもある。


 リスクを加味しても、この婚姻を各国の要人がいる場で発表すれば、ローファスは立場的に離婚してバックれるという手法が取りにくくなる。


 ローファスの読み違い——否、タチアナはローファスが思っていた以上に、ライトレス(強者)の血を欲していたという事。


 ローファスは即座に影渡り(シャドウムーヴ)を行使し、転移を始める。


 幸いにもタチアナにがっしりと掴まれているのは左腕。


 義手は切り離して、後でテセウスに直させるなり代わりのものを用意させれば良い。


 しかしそれすらも、タチアナは読んでいた。


 足で地を踏みつけ、雷で影を散らして転移を妨害。


 そして同時に暗黒で構成されているタナトスの体に高密度の雷を流し、暗黒は即座に散らされる。


 メインドームのど真ん中で、ローファスの素顔が観衆の下に晒された。


「今日という日の為に秘密にしておったが、スペシャルサプライズじゃ。ここに居るのは先日、正式に我が伴侶とあいなったタナトス改め、王国の英雄、ライトレス家が長子——ローファス・レイ・ライトレスである」


 タチアナにより高らかに宣言された婚姻の告知。


 一瞬の静寂——その末に観客席は、爆発的な声に包まれた。


 女性客からは歓声、男性客からは阿鼻叫喚の絶叫。


 MCのマーズと姫巫女の側近達は、膝をついて絶望の声を上げた。


 王国の英雄、王都を襲撃した《魔王》を下し、帝国にも単身で乗り込んで制圧して見せた屈指の武人——そんなローファスの話は聖竜国でも有名。


 強者を尊ぶ聖竜国では、ローファスという存在はかなり人気がある。


 姫巫女の結婚という一大発表、それも相手が最強の英雄ともなればその歓声は凄まじいもの。


 最強の剣闘士タナトスの正体が実はローファスで、しかもタチアナの結婚相手。


 当然、その反響は凄まじい。


 鳴り止まぬ喝采の中、呆然と立ち尽くすローファス。


 身体に流された電流の影響か、僅かにビリビリと痺れる。


 その雷を払うように、タチアナはそっとローファスの頬に優しく触れた。


「…すまんのう。強固な暗黒(タナトス)の衣を剥がすのに加減できなんだ。痛くはなかったか」


「…」


 本気で人を殴りたいと思ったのはレイモンドが国外逃亡した時以来だと、ローファスは口元をひくつかせていた。



 そんな一幕がありつつも、闘技大会はいよいよ決勝戦。


 闘士は北、王国代表|《蒼炎》のアベルと、聖竜国代表|《宵闇の刈手》タナトス——もとい王国の英雄、《黒魔導》ローファス。


 どちらも王国の魔法使いじゃないかというツッコミをするものは観客にはいない。


 なぜなら英雄ローファスは姫巫女の夫となった——つまり立派な聖竜国側の人間。


 必然的に聖竜国民の多いメインドームでは、空気的にもローファスの勝利が望まれている。


 アウェイな空気の中、アベルはローファスと対峙する。


 銅鑼が鳴らされるまでの少しばかりの猶予。


 そんな中で、アベルはローファスに声を掛けずにはいられなかった。


「あの、ローファス…」


「…」


「ローファス?」


「煩い…聞こえている」


「えっと…聞きたい事とか色々とあるんだけど、きっと理由があっての事だと思ってる。でもさ…」


 アベルは言い難そうに目を逸らす。


「…どうするの」


「分かっている」


「分かってるって…多分だけど、()は今大変な事に…」


「だから分かっている。分かっているから、言わなくて良い」


 消え入りそうな声で弱々しく俯くローファス。


 アベルの視線の先は——王国側貴賓席。


 この距離でもひしひしと伝わってくる——ある数名の、凄まじい魔力の乱れが。


 ローファスは顔を上げる事ができないでいる。


「えっと…一緒に謝るから」


「それは素晴らしい提案だ。貴様と共に謝れば許してくれると?」


「あー…リルカは、許してくれない、かも」


「分かりきった事だな」


 ローファスは自嘲するように鼻を鳴らす。


 中々試合開始の銅鑼が鳴らないなと、ふと壇上に目を向けると、MCのマーズが進行を放棄して「どうしてですか我が姫巫女様(マイクイーン)!!」と咽び泣いていた。


 銅鑼バチは床に転がっている。


 これまではそれを正す役目を担っていた姫巫女の側近らも、各々が項垂れていたりギャン泣きしていたりと使いものにならない。


 正しく阿鼻叫喚の地獄絵図。


 どう見ても試合どころではない。


 全て貴様の所為だぞ、どうする気だ、とローファスは貴賓席に戻ったタチアナを睨みつける。


 目が合ったタチアナはニヤリと意味深に笑う。


 まるで問題ないとでも言うかのような余裕の笑みにローファスが眉を顰めていると、突如観客席から一振りの戦斧が飛来した。


 凄まじい速度で迫った戦斧は、ローファスとアベルの間に突き立つ。


 それは見覚えのある——黄金の戦斧。


「その試合、ちょっと待ったぁーーー!!」


 野太い雄叫びがメインドームに響き渡った。


 同時、メインドームにある男が降り立った。


 鬼を模した二本角のフルフェイスの兜に、鍛え上げられた大柄な肉体。


 元最強の剣闘士、《不死身》と色々と呼び名はあるが、今は——


「俺はアニキ一番の舎弟、ボレアスだ。今日はアニキと姐さんの晴れ舞台! 王国代表だかなんだか知らねえが、テメエみてえな雑魚が邪魔して良い訳ねえよなあ!?」


 黄金の戦斧は一対。


 手に持つもう片方の戦斧を、ボレアスはアベルに向けた。


「アニキの出る幕はねえ。テメエ程度、舎弟の俺だけで十分だ!」


「ローファスの舎弟…? ボレアスが??」


 ギョッとしたようにローファスを見るアベル。


 本当に聖竜国で何をしていたんだと。


 ローファスは心底億劫そうに目を逸らした。


「…認めた覚えはない」


「テメエ! なに偉大なるアニキの本名を気安く呼んでんだ! まるで友達みてえによお!? つかよく見たらイケすかねえ顔してんなぁ! 見てるだけで虫唾が走るぜ!」


 溜息を吐くローファスに、全力でアベルに喧嘩を売りに行くボレアス。


 一旦黙らせるかとローファスが拳を握り締めた所で、未だ立ち直れていないMCマーズに代わり、貴賓席のタチアナが進行を始める。


『これはこれは…前年度優勝者のボレアスが乱入とは、なんとも面白い展開よな。予選敗退したとはいえ、最強であった事に変わりはない。ボレアスの戦闘を見たいという者も多いじゃろう。じゃが、新たに試合を追加する程の尺は無い。よって——闘技大会の決勝は、タッグマッチとしようではないか』


 姫巫女権限じゃ、とタチアナは楽しげに付け加える。


 今思いついたかのような突然のルール変更。


 しかしどんな無茶苦茶であろうと通る。


 なぜならば比喩でもなんでもなく、聖竜国では姫巫女がルール。


 姫巫女の案を肯定するかのように、多くの歓声が会場を満たした。


 異論の声など上がらない。


 いや、僅かに上がる疑問や困惑の声は、圧倒的な賛同の声により掻き消された。


 闘技大会の舞台であるここ聖大闘技場(ジガンテ・コロッセオ)に収容されている観客の大多数が、聖竜国民なのだから。


 姫巫女は言葉を続ける。


『聖竜国代表、最強×最強に挑むのは王国代表の若き勇者か。闘技場の神話に新たな歴史を刻む世紀の一戦になるであろう。無論、王国側からもう一人選手を選出して良い。タッグマッチじゃからな。何より——王国側からも並々ならぬ戦意を感じる。妾好みの美しく良い闘志じゃ』


 王国側貴賓席をチラリと見て楽しげに笑って言うタチアナ。


 貴賓席より迸る殺気にも似た威圧をひしひしと感じながら、その表情はそよ風を楽しむかのように穏やか。


 勝手に次ぐ勝手。


 ローファスの正体をバラし、婚姻関係にある事を公表するだけに留まらず、あろう事か親しき者をタッグマッチなどに駆り立てている。


 ローファスの苛立ちも限界であった。


 そして堪忍袋の尾が切れる寸前——王国側貴賓席より、ある人物が飛び降りた。


 どよめく観客。


 多くの視線をその身に浴びながら、その人物は特に気にした様子もなくローファスの前に立った。


 戦いの場には似つかわしくない、漆黒の女中服を身に纏って。


 アベルは意外そうに目を丸くし、ボレアスは見定めるように睨みながらズカズカとその人物に近づいて行く。


「あぁ? まさかテメェが戦うってのか!? ここは神聖なる闘技場だ、下女が立って良い場所じゃねえ。帰ってご主人様の下の世話でもしてるんだなクソアマ——」


 例の如く喧嘩を売りに行ったボレアスは凄まじい衝撃を受けて吹き飛び、壁にめり込んだ。


 それに構わず、黒髪の女中——ユスリカは洗練された動作で優雅に一礼する。


「お久しぶりでございます、ローファス様」


「ああ…遠路はるばる、よく来てくれた」


 ローファスは微笑み、己の女中を迎える。


 いつの間にか、苛立ちは収まっていた。

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