第19話 報酬の交渉
「来てもらって早速だが依頼を果たしてもらいたい。現在の状況を説明する」
そう王様の側に居る偉そうな人(宰相かな?)が話そうとすると、ユーダイ様がそれを止めた。
「失礼ながら申し上げます。その前に報酬の話をお願いしたい。それとも望みは何でも叶えていただけるのですか?」
偉そうな人はグッと口元を引き締めたが、何事もなかったように冷静に振舞った。
「謝礼なら十分用意してある」
「お金も宝石も素材も名声も私たちは十分に所持しております。そのようなものでは動けません」
すると周りのお付きの人が口々に無礼なとか、これだから異世界人はとか言い出す。それでもユーダイ様も皆も動じた様子はない。向こうも帰れとは言わない。つまり今ユーダイ様に頼まないといけないような大事件が起こっているということだ。
次の口を開いたのは王様だった。
「何が望みだ。申してみよ」
「はい、わたしたちが望むのはこの国での、私と仲間全員の永住権です」
貴族たちがざわつく。どうやら皆それを認めるのは嫌そうだ。
「それは総勢何人になるのだ」
「100人前後ですね。王都に住まわなくても構いません。廃村でも荒れ地でも結構です。是非バルティス王国民にしていただきたい」
「それは……」
「私を召喚した国は内乱により滅びました。仲間は私が下した魔王国民が多いですがその国も滅びました。ですが100人の大所帯です。今はバラバラに住んでいますが、できれば落ち着いて共に暮らしたいのです。彼らのほとんどは冒険者と職人です。優れた技術を散逸することなく、陛下の他の民と同様に忠誠を捧げ、納税をさせていただきます。もちろん罪を犯せば罰してもらって構いません。他の民と同様の権利もいただきますが」
「同様の権利とは?」
「わざわざ言うほどのことでもございませんが、国民として義務を果たす代わりに皆さんが持っているもの、身を守る権利、仕事をする権利、勉学をする権利、国内を移動する権利などを欲しているだけでございます。例えば魔族だからと見下され、理由もなく奴隷にされるようなことがないということです。もちろん借金奴隷や犯罪奴隷のように、己の犯した所業により奴隷にされる分は構いません。それは人間の皆様と同様です」
「なるほど」
「そうすることでこの国は1ヤンも掛けずに依頼出来ますし、私たちが今回の問題を処理してご覧に入れます。いかがですか?」
ヤンというのはこの国の通貨単位のようだ。どのくらいの価値なのかは後で教えてもらおう。
「それは少々図々しい願いではないか?」
「そうでしょうか? 別に私たちはバルティス王国に固執しているわけではございません。たまたまご依頼いただいたので、最初にお声がけしたまでのこと。別に他の国に行ってもよいのです。今回のご依頼は不成立ということでよろしいですか?」
「貴様、我らの依頼を断るというのか⁈」
貴族の1人が怒声を浴びせる。
「私たちは冒険者です。依頼に対しての報酬が見合わなければ断る権利を有しております。しかもこの国の民ではない。断っても処罰対象ですらありません。もちろん国民となれば話は別です。自分たちの国を守ることは国民として当たり前の事。それでも無報酬というわけには参りません。ここにいる貴族、騎士の方々は皆様、国王陛下からの禄を食んでおられるでしょう? 違いますか?」
家臣たちがざわついていたが、王様は落ち着いたものだ。
「ふぅむ、他のどこに行こうというのだ?」
「神聖皇国サクリードを考えております。かの国は魔族たちの有用性をきちんとご理解してくださっていますから。他の国でもいいですね。私たちのほとんどは強い魔力と高い魔法技術を使い、強靭な肉体を持っているのです。引く手あまたですよ」
「ほとんど?」
「子どもや年寄りもおりますので、ほとんどといたしました。このような交渉の場で嘘はいけませんから」
「わかった。少し協議する。其方たちは別室で持っておれ」
それで別室に行き、やっと足を崩すことが出来た。ついていた膝も痛いし、ずっと動けなかったから脚がしびれている。
するとウィル君がそっとわたしの脚に触った。
ビリビリが来ると思って身構えたのに来なかった。むしろそれまでのしびれが消えた。
「父さんの大事なお客さんだから。特別だよ」
ウィル君は治癒魔法でわたしの痛みを取ってくれたのだ。
わたしの国では治癒魔法はものすごく高い。こんなしびれ程度では受けさせてもらえない。バルティス王国は魔法士の多い国と聞いているが、それでもマール国よりは少し安い程度だと思う。つまりわたしにその対価は払えないってことだ。
「あ、ありがとう」
ユーダイ様がこちらを見てウインクした。
「ウィルの力、内緒にしておいてね」
「もちろんです」
だって言っていいと言われたこと以外は言うと死ぬ契約なんだから。
とりあえずこの国の王様と宰相他は見覚えがなかった。私が知っているのは部屋や建物だけってことだ。でもそういう背景だけの仕事をしたことがない。
わたしの絵の魅力はキャラ絵だった。そのキャラにふさわしい部屋やドレスを考えるのも好きだったし、戦闘シーンやラブシーンもお手のものだった。というかラブシーンを書くためにどれだけ裸体デッサンをしたことか!
コホン、話はそれたがとりあえず、あの王様を知らないってことはわたしが描いたのは別の王様の可能性がある。近いうちに代替わりするとか?
とにかく早急にユーダイ様に相談しなくては……。でも今この王城で言うことではない。頼りたくないって思ってたけど、やはり頼らなければやっていけなさそうだ。
とにかく状況をはっきりさせて、早く一流の絵師になるしかない!
だからちゃんと借りは返しますので、もう少しだけ頼らせてください‼
お読みいただきありがとうございます。




