第134話 口止め料と突然の招待
聞きたい話と言うのは、俺たちを襲撃した騎士たちの話だった。俺がかいつまんで話をすると眉間にしわを寄せながら目を閉じて聞いていた。目は口ほどに物を言うから、考えていることを悟られないようにしていたようだ。
「それでそやつらを眠らせて、丸裸にして放置してきたということですな」
「ええ、盗賊とみるにはおかしい様子でしたから。ご令嬢を別な所へ売り飛ばそうとする父親と義妹を連れていましたし、依頼人であるメイバロウズ家の意向と違い過ぎました。それで安全策として命を取ることはしませんでした。眠りの魔法を掛けましたが鍛えられた騎士ならば魔獣の餌になることはないはずです。これまで私の知る騎士の方々は皆そうでしたし、こちらでもそうだと思っております」
「もちろんですとも。我が国の騎士にそんな軟弱物はおりません」
「ただ怪しい行動をとっていたのも事実で、それで武装解除のため服を脱がせ、武器を奪いました。すぐに目を覚まして追ってこられないようにするためでもあります。魔力持ちの方もいらしたので魔法戦で十分戦えたでしょう」
「ふむ、筋は通っておりますな」
「彼らはやはりサフィーン国の騎士だったのでしょうか?」
「はい、残念ながら」
「そうですか。もしやメイバロウズ家の政敵か何かで?」
「いえ政敵ではございません。この国は10年おきに国主が変わることはご存じで?」
「はい、こちらの依頼を受けてから知りました」
「現在国主でおわします、オーガスタス家が差し向けたようです」
「なぜですか? 結婚は許可されていたんですよね?」
「エルフの妻は力の均衡を崩すのではという懸念から迎えに行ったそうです。その父親や義妹は家族だからという理由で同行を許したそうですが、ご令嬢を転売するなど恐ろしいことを言うまでは結婚式に参列するために来たのだと思っていたそうです」
「その割には騎士の方々は何もしていませんでしたが? それで私は共犯関係にあると見なしました」
「彼らも何を言い出しているんだと思って、上に確認を取ろうとした矢先にあなたに眠らされたそうです」
「ですが父親とは言え目の前で罵倒され、3倍の価格で売り飛ばすと宣言していたんですよ? 義妹もこちらのメイバロウズ家に勝手に嫁ぐなど言っていましたし、不敬罪で取り押さえるぐらいしてもいいと思うのです。その程度の判断も出来ないのですか?」
「いやいや、面目次第もござらん」
めっちゃ怪しい……。そのオーガスタス家の命令ってレクソール嬢の暗殺だったんじゃないの?
でなければあんな暗器まみれの騎士なんて、おかしいだろ?
「ではそう言うことでよろしいですか?」
「いや、待って下され。実は彼らから奪った制服や剣を返却して欲しいのです」
「なぜですか? 私はこの国と対立したくないため殺しませんでしたが、彼らは明らかに危険な存在でしたよ。保護や確認の命令が確かなら、なぜご令嬢の側に居た全員を拘束し護衛の女性を剣で殺すと脅して、馬車からあの方を出そうとしたのか意味が分かりませんが?」
「……」
「私たち冒険者が受けた依頼はご令嬢をメイバロウズ家に送り届けるため、商隊の安全を守ることでした。彼らは商隊の安全を明らかに脅かしていた。私の討伐対象です。ただ何かの理由があるかもと殺害までは思い留めましたが、盗賊団として全員殺していても文句は言えませんでしたよ?」
「それを証明することは?」
「できます。私のスキルに記憶を映像にして他者に見せることが出来るのです。それをご令嬢に確認していただきましょう。彼女は奴隷や平民ではなく、れっきとした伯爵令嬢です。その証言には価値があります。今、ここでお見せしてもいいですよ?」
ここでお前ら騎士団がしたことを、騎士たちが冒険者に全裸にされた恥でしかない映像を白日にさらしてもいいんならな。
さすがに歴戦の騎士殿は俺の言いたいことが通じたようだ。
「いやそれには及びません。ですが家宝の剣を失ったものもおります。できれば買取させていただきたい」
「高めにお願いしますね。今後このことをいろんなところで話さなくても良い気持ちでいたいのです」
「ははは、お手柔らかに願います」
全部まとめて金貨5千枚(日本円で5億円)で売りました。個別に売ればもう少し値が上がったかもしれないけど、そこまでするほど時間もかけたくないしね。1万枚から半分にさせられたけど、俺としては2,3千枚になったらいいなぁって思っていたから上々だ。
もちろんこれには口止め料込だしね。
あとサービスで俺の記憶の映像(生体コンピュータの機能だ)も見せときました。中には国でも有数の凄腕騎士もいたみたいで全裸にされて捨ておかれるシーンはこの歴戦の騎士であった老人には堪えたようだった。
大丈夫! お金貰ったから、そちらが俺に危害を加えない限り公開しません。
ただこの国もキナ臭いから長居せず、さっさとエルフの森へ出発しよう。
そう思ったのにまだ帰らせてもらえないようだ。
なんか執事っぽい人が俺たちに向かってきて、老騎士に話しかけた。
「お話し中、失礼いたします」
「いや終わったところだ。かまわん。何用だ?」
「はい、主が勇者ユーダイ様を是非お食事に招待したいと申しております」
「どうかね? ユーダイ殿?」
「あー、私は用がありますので、できればここで帰らせていただきたいのですが」
すると2人に驚愕された。この国でトップクラスに高貴な相手だもんな。この間までは王子の立場だったわけだし。
「そのご予定は変えていただけませんか?」
「できればこのままこの国を出たいと考えております。先ほどもこちらに手短に済ませて欲しいと頼んだわけですし」
「左様でございますか。それではお茶の1杯だけでもいかがですか?
パトリシア様は同席できませんが、主は執務中でちょうど休憩を挟むところなのです」
ここまで譲歩してもらって、嫌だとは言いにくい。なにしろこの国の最高位の貴族なんだから。
「わかりました。では1杯だけ」
お読みいただきありがとうございます。




