表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再編の針と失われた縁  作者: 神田長十郎
第二章 覚悟
49/73

第四十五話 忍び寄る影

鈴木たちが応接室に入ってい言った後、

受付前では、衛兵たちが隊長の指示を待ちながらも

グスターボ達とのにらみ合いが続いていた。


グスターボは腕を組み、

一歩も引かぬ姿勢で衛兵たちの前に立ちはだかる。


カティアとエイラは左右に広がり、

いつでも動けるよう構えていた。


フィーロはヨハンの手を握り、

紡と共に怯えるヨハンを支える。


空気が張り詰め、

誰もが一歩も動けない。


その時――


突然紡の影が揺れたと思うと、胸の奥が”ビリッ”と震えた。


「……ッ!」


思わず胸元を押さえる。


(なんだ……これ……?

心臓…じゃない。もっと奥……

これは……”縁”が……?)


今まで感じた”逃げろ”と似ているが、

それとは違う”縁”の震えを感じた。


理由はわからない。

ただ強烈な”違和感”を感じ

紡は周囲を見渡した。


グスターボ達の背中越し衛兵たちが視界に入る。

そのうち一人

紡の視線が、自然と”そいつ”に吸い寄せられた。


他の衛兵と同じ鎧、同じ装備。

だが――


その人だけに異常なまでの”違和感”を感じた。


(あの人…なにかが”違う”……

なぜか強くそう感じる……なにが…?)


突然感じた”違和感”に戸惑っていると、

その衛兵は、紡の視線に気づいたのか

ゆっくりと顔を向けた。


目があった瞬間――


”縁”が激しく震えた。


(……っ!!なんだこれ……

”違う”……この人は衛兵じゃない……!)


そいつは何も言わず、

ただ薄く笑ったように見えた。


次の瞬間、

「アマノさん……大丈夫……?」


その声に紡はハッとし

声がした方へ目を向けると、

そこには心配そうな顔をしたフィーロがいた。


「アマノさん……顔色が悪いよ…?何かあったの?」

「いや……えっと……」


紡は突然感じた”違和感”についてどう説明したらよいのか

戸惑いつつ、もう一度先ほどの衛兵に視線を移すと


「……あれ?」

紡は思わず声を漏らした。


先ほどまで感じていた”縁”の震えが

嘘のように静まり返っていた。


まるで――

その存在が、意図的に気配を消したかのように。


フィーロが心配そうに覗き込む。

「アマノさん……?本当に大丈夫……?」

「……うん。いや……その……」


言葉が出ない。

説明しようにも、

”違和感”を感じたなんてどう説明したらよいか……

説明したとしても理解されない気がした。


紡はもう一度、さっきの衛兵を見た。


その衛兵は他の衛兵と同じように

隊長の指示を待つだけの“兵士”に見えた。


(……さっきの”違和感”は何だったんだ……?)


紡が戸惑っていると

突然グスターボが低く唸るように言う。


「……妙だな」

(……え?)

紡がその言葉を聞いて顔を上げる


「さっきから、空気が変だ。

“誰か”が俺たちを見ている気がする」


カティアとエイラも、グスターボのその言葉を聞き

衛兵たちを警戒するように視線を走らせる。


その動きに衛兵たちもピクリと反応し

その場に緊張感が走った。


そのとき――

応接室の扉が開いた。


ナディアと鈴木。

そしてその後ろから衛兵の隊長が戻ってくる。


「お待たせいたしました」

ナディアのその声に、

受付前の空気がわずかに緩んだ――


はずだった。

だが紡の胸の奥では、

まだ“縁”がかすかに震えていた。


(……まだいる……完全には消えてない……)


ナディアは衛兵たちに向き直り、

落ち着いた声で告げる。


「拘束命令については、

隊長と協議の上“保留”となりました。

ヨハンさんの身柄は、当面こちらで保護します」


衛兵たちがざわつく。

「保留……?」「そんな……」「どういうことだ……」


その中で――

紡は、さっき“違和感”を覚えた衛兵を探した。


(……どこ……?)

見渡すもどこにもあの衛兵が見当たらない。


低い声で隊長が続ける

「これより急ぎ戻り、上に確認を取る。

ナディア殿……念のため数名はこちらで待機させておく」

「……構いません」


ナディアの返事を聞くと、隊長は頷き

「行くぞ」

と短く告げると、数名の衛兵を残し

帰っていった。


紡は帰っていく衛兵たちを注意深く見るも、

”違和感”を感じた衛兵の姿は見えなかった。


「皆さん、今より正式にヨハンさんは

私たち”再編の針(リ・ウィーヴ)”が責任を持って保護します。

フィーロさん。ヨハンさんをお部屋に、

カティアさんとエイラさんも護衛としてついてください」


「わかった」「承知いたしました」「はい」

3人は返事をする。

すると残っていた衛兵が一歩前に出る

「我々も同行します」

短く告げると鋭い目つきでヨハンを見る

その眼にヨハンはびくりと肩を震わせる。


「……わかりました」

ナディアは衛兵たちの申し出を承諾する。


「ヨハンさん。安心してください。

私たちがあなたをお守りします」

カティアがヨハンを安心させるために

優しく声をかける。


「……はい。よろしくお願いいたします」

ヨハンは少しだけ笑顔を見せ、

フィーロ達、そして数名の衛兵と共に

受付ロビーを出ていった。


「グスターボ隊長は、念のため衛兵たちの様子を

見ていてください」

ナディアさんの指示にグスターボは小さく頷く。

「……わかった」

そういうと、フィーロ達の後についていった。


――

受付ロビーが落ち着きを取り戻し、

職員たちがざわつきながらも各々の持ち場へ戻っていく。


その喧騒の中――

誰にも気づかれぬよう、

一人の職員の制服を着た男が、ゆっくりと扉へ向かった。


歩き方は静かで、

まるで“そこにいることが自然”であるかのように溶け込んでいる。


だが――

紡の縁が、

その男が通り過ぎた瞬間だけ、

かすかに、ほんの一瞬だけ震えた。


(……今の……?)


紡が振り返ったときには、

もうその男は扉に手をかけ外へ出るところだった。


扉が閉まる直前、

男の口元がわずかに歪んだ。


笑ったのか、

嘲ったのか、


それとも――

“見つかった”と楽しんでいるのか。


紡の縁が、

ビクリと跳ねた。


(……っ!!

やっぱり……あれは……!)


だが、声を出すより早く、

男は扉の向こうへ消えた。


扉が閉まる。

その瞬間、

縁の震えも完全に消えた。


本日も閲覧いただきありがとうございます。

明日も投稿できるよう頑張ります……!


よろしければ明日も覗いて行ってください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ