第23話 約束の見送りと屋敷の確認・魔改造
ようやく書けました。
王城で予定外の仕事をした次の日。
「ケネス。この後の予定は何かあるのか?」
「陛下から賜った屋敷を見に行こうかと思います」
「そうか、気を付けて行きなさい」
「はい」
「ケネス様、王城より使いの方がお見えになられておりますが」
家族で朝食を食べている途中、執事のルドムが来客を告げてくる。
「・・・いったい、誰からの使いですか?」
「今回は、宰相のアズライト侯爵様のようです。それと手紙があります」
「・・・なんで?宰相様が」
「要件は王城に着き次第話すという事ですので」
受け取った手紙の差出人を確認するとリアからであった。
内容を確かめると、そこにはお茶会へ招待する旨が掛かれている。
彼女としては昨日の約束を果たすために、呼んだのだろうが、出席者の中に王妃様の名がある時点でお菓子の催促が見え隠れしていた。
「・・・わかった。丁度食べ終わったから行ってくる。父さま、母様行ってきます」
「ああ、失礼のないようにな」
「いってらっしゃい」
家族に挨拶をして使者の人が乗って来た馬車に乗せてもらい、王城を目指す。
前回と同じ人が使者なので、あまり緊張することなく進んで行く。
昨日案内された応接室ではなく、何故か宰相様の執務室に案内されたのが気になるが、用意されたお茶で喉を潤しながら呼ばれた理由を考える。
(宰相様の関係することで、何かしたっけ?)
「待たせたな。ケネス殿」
ライナード宰相と何故かアーヴィング卿の二人が入って来たので立ち上がる。
「まあ、座ってくれ。朝の会議が少し長引いてな」
「いえ、ここのお茶は美味しいので退屈はしませんでした」
「そうか。実は昨日、王城内の書類が大変見やすくなったと部下から聞いてな。出所を聞いた所、アーヴィング殿の経理部だとわかって、そのことをアーヴィング殿に確かめたらお主の名が出たのでこうして来てもらったのだ」
「ケネス殿が作ってくれた書式は今日も大活躍しているよ。おかげで書類の山がかなり減ったよ。ありがとう」
「いえ、出来ることをしたまでですので」
「私の所に来る書類も大分読みやすくなったのでな、仕事が捗っているよ。そんな訳で私たちから報酬を渡しておこうかと思うが、金貨ではお主は喜ばないと考えたので何かあれば私たちが後ろ盾になる。その証としてこれを渡そうと思って、今日来てもらった」
「ありがとうございます」
二人から家紋が記されたバッチを渡される。
両家が後ろ盾になるという事は、金貨を貰うよりも価値が高くないだろうか?
ライナード宰相は侯爵家の、アーヴィング卿は伯爵家の当主をしている。
この国の高位の貴族二人からの後ろ盾は、こと王城内では強力な切り札になりえるのだ。
例えば騎士団の誰かが俺と揉め事を起こしたとした場合は、その騎士団の予算を大幅にカットすることもできる。
本来それを止めるはずの二人が止めないから間違いなく決定事項として受理されるだろう。
最もそんなことはしないが。
「では、宰相様、アーヴィング卿。私はこれからエステリア王女のお茶会に招待されていますので」
「うん。仲がよろしいことで何よりですな」
「昨日も仲睦まじい姿を拝見しましたよ。叔父上」
これ以上ここにいるのは良くないと感じて急いで部屋を後にするが、それすらもエステリア王女に早く会いたいと考えたものだと思われてしまうのであった。
部屋を出るとそこにはリア付きのメイドが待っており、お茶会の席まで案内をしてくれるようなのでお願いする。
王城内でも王家の人たちが暮らすエリアにある庭園に入ると既にリアと王妃様が席についていた。
「遅くなり申し訳ない。今回のお茶会にお招きいただきありがとうございます」
「そんなことはないわ。私たちも今しがた来たところだから」
「・・・うん。謝ることはない」
「その髪飾り、今日も付けて下さっているのですね。エステリア王女様」
「・・・お守りの魔道具だし、その・・・気に入っているから」
「ありがとうございます」
メイドに案内されて席に着くと、直ぐに温かいお茶を出される。
ただし、お茶請けは無いと思ったがリアから期待の眼差しが向けられている理由が分かった。
ご丁寧に簡易キッチンも近くにある。
「・・・・・・何かお茶請けを出しましょうか?」
「是非っ!」
「ふふ、お願いしていいかしら」
二人の、いや周りの期待に満ちた視線を受けつつ、アイテムボックスからお茶受けを取り出していく。
今回出したのは、昨日と同じクッキーと新作の一口シュークリームの二つ。
「今日は、クッキーと一口シュークリームです」
「・・・美味しそう」
「本当に、食べるのが勿体ないわね」
二人の感想に同意するかのように、後ろに控えるメイドたちが頷く。
リアが一口シュークリームを一つ摘んで口に運ぶと嬉しそうに顔を綻ばせ、王妃様は優雅にカップを傾ける。
ゆっくりとした時間が流れていくのを感じながら楽しんでいると、王妃様から質問が飛んできた。
「そういえば、ケネスちゃんは今日の予定はあるの?」
「この後は、賜った屋敷を見に向かいます。中の状態を確認したり、使用人や内装の手配をやろうかと」
「なるほどね。内装に関してはあまり言えないけど、使用人に関してならどうにかできるわ。王城の使用人を何人か向かわせましょう」
「王妃様、ありがたいですが私は自分の専属メイドを連れて行きたく思います。しかし、彼女はエルフですので亜人に対して偏見のある人は・・・」
「分かっているわ。そこは任せてちょうだい」
彼女が頷くと一安心できるのは信用故かはまだ分からないが、あとは王妃様の人選に期待をしておくとしよう。
リアが一口シュークリームを食べるごとにする幸せそうな表情を見ながら、今日のお茶会は終いとなった。
昨日の約束通りに、リアが城の出入り口まで見送りをしてくれる。
イゼルナが気を回してくれたのか辺境伯家の馬車がすでに待機していた。
「今日はありがとうございます。エステリア王女様」
「うん、ようやくお見送りが出来た。ありがとう」
「今度は私がお茶会にご招待しますよ」
「・・・楽しみにしている」
馬車に乗り込むと引越し予定の屋敷へとゆっくりと動き出す。
王城を起点として貴族街・商業区・一般街と広がっている。
今回貰った屋敷は貴族街の中でも一般街の方に近い所にあるらしい。
ちなみに学園は貴族街と一般街の間にあるらしくどちらからも通えるという。
しばらく馬車を走らせていくとようやく到着する。
「ここが貰った屋敷か」
一旦、門の前で馬車を降りるとまず目に飛び込んできたのは、約100メートル四方の敷地に正門から石畳のロータリーが屋敷の玄関まで続いていく。
中庭の真ん中には円形の噴水があり滾々と水が流れているが、その周りの何もない花壇が寂しさを感じさせた。
元は色とりどりの花が咲いていたであろうが、今は見る影もない。
奥の方に目を向けると二階建ての屋敷が見える。形としては一般的な?凹の物かと思ったがマップで確認すると円の字を逆さまにしたような形のようだ。
敷地内へ入ると屋敷のほかにも建物があるようで、正門から見ると右側に小さな建物があるが今は屋敷の確認が先である。
貰ったカギで扉を開けて中に入ると、太陽の光が窓から差し込んでいるが室内は薄暗い。
「ライト」
掌に光の玉が浮かび上がると周囲の様子がはっきりと見えてくる。
「どうやら、価値のある家具なんかは没収した時に持って行ったようだな。まあ、その方が作業がしやすいからいいな」
建物の中は、正面に階段があるロビーとなっている他に、側には執務室とダイニング・キッチンといくつかの部屋(おそらく使用人たちの部屋かもしれない)があり、左側にはパーティーが出来るほどのホールと応接室そしてお風呂場があった。
二階に上がると中央部はL字型のサロンと主寝室と大小の客間が十は確認できる。
「こんなに広いと掃除が大変だぞ。・・・仕方ない」
敷地内を魔力で覆うと創造魔法を発動する。
「リペアー」
魔力がなくなる感覚と共に周りの物が新品同然の輝きを取り戻していく。
敷かれていた絨毯や壁等の汚れは全て綺麗になっていき、建物の劣化もしくは破損している箇所も新品同様に直っていく。
「ふぅ。こんなもんでいいかな?」
「そうですね。家具などは新しく雇う執事の方と相談してからでも遅くはないかと思います」
「そうだな」
その後イゼルナと二人で屋敷内の部屋やキッチンなどを回って行き、実家では出来なかった魔改造を施していく。
特に力を入れたのはキッチンとお風呂場そしてトイレだ。
この世界のキッチンにある火元は大抵が旧式のかまどで、魔石で火を起こすタイプのかまどもあるにはあるが大まかに強火・中火・弱火と火力が決めてあるだけなのでぶっちゃけスペースの無駄である。
王都まで乗って来た馬車にも施した物と同じ物を作り、要らないかまどは土魔法で文字通り土に還す。
トイレに関しては一から作った。
まず創造魔法で長石と陶石、粘土を創りだして水魔法で水を足しながら混ぜていく。
次に土魔法で成型してから風魔法で少しづつ水分を抜いて、乾燥してから傷がないか確かめ、雑草などから作った釉薬を吹きかけて火魔法で焼成していく。
これで日本でよく見る洋式便器の完成だが、ここからこの世界ように改造していく。
生活魔法の「クリーン」の術式を組み込む、これでコックを回せば魔法が発動して出したものを綺麗にしてくれる。
動力として魔石を取り付けて使用者から自動的に必要な分だけ吸収するようにした。
「クリーン」は対象の汚れを綺麗にする魔法なので問題はないだろう。
最後にお風呂にく関してもトイレと同じように「クリーン」の術式を組み込んで置いたので掃除は楽になるだろう。
ここまでの改造で生活環境はかなり改善したと思う。
実を言うとこの世界のトイレなどの処理は十分とは言えない状況で辺境伯領でも下水の匂いが気になっていたが、王都ではさらにひどいのでこちらの我慢が限界になったのでこれらを製作したのだ。
構造としては簡単なのでアーヴィング卿に紹介して貰った商会で作ってもらおうかと考えている。
「取り合えず、こんなところか?」
「主、そろそろ日も暮れますのでお屋敷にお戻りになりましょう」
「そうだな。そうしよう」
実家の屋敷に帰ってくると、父さまにアーヴィング卿に紹介された商会を聞いてみた。
「その商会なら知っている、王都でも指折りの商会だ。ここなら家具も置いているから、お前の屋敷に呼ぶといい」
「分かりました。父さま」
「アーヴィング卿の紹介状があるのなら、大丈夫だろう。人をやるから明日には来るはずだ」
「ありがとうございます」
「・・・馬車についてはどうする?」
「自分で作りたいと思いますで、大丈夫です」
「・・・無理かもしれんが、自重はしてくれ」
「無理です」
俺の返事を聞いて、執務机に崩れ行く父さまを振り返ることなく俺は部屋を出ていく。
扉を閉める時に、大きなため息を聞いたのが聞こえたが気のせいと流す。
その日の夕食は、料理長に頼んで父さまの夕食を少し豪華にしてあげたが本人は不満そうにしていた。解せぬ。
もうすぐ10万PVっ!
これまで読んでくれている皆様には本当に感謝です。
これからもよろしくお願いします。
修正や感想・ブックマークお願いします




