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戦場の絆

重巡よりも軽巡がレベルも高いし役に立ってくれるこの頃。

そして中々でない天竜と足柄

呉サーバーでひっそりやってます。

「旗艦ひゅうがより入電。本艦隊は太平洋艦隊の前衛に立つとのことです」

「先行のあきづきに続け」

新編成の第一機動護衛艦隊と第二威力偵察艦隊からなる海上自衛隊遣印艦隊は、アメリカ太平洋艦隊と合流してインド洋北部に布陣していた。

原子力空母二隻、ヘリ空母一隻を中核に、十六隻もの日米艦が続く。

イージスシステムを搭載した艦は(日本製廉価版搭載艦もふくめて)十二隻。

それにインド海軍もなけなしの空母一隻、駆逐艦八隻を派遣。

ここに戦後最強の艦隊があらわれることになった。

こんごうCICは艦長の陸奥一佐が仁王立ちし、脇に砲術長の利根一尉が控えている。

司令官の金剛上級一佐はレーガンにいる。

「旗艦レーガンより入電。間も無く敵艦隊との交戦圏に入る」

「総員第一種戦闘配置。警戒を厳となせ」

オペレーターが告げる開戦(ショウダウン)の訪れ。

ステニスとレーガンでは攻撃機の用意が始まっているだろう。

「攻撃機、発艦始めました」

艦橋の副艦長より報告が入る。

薄暗い穴蔵では分からないが、艦橋では朝靄の中に紅蓮の尾を引く雀蜂の勇姿が拝めるのだろう。

二月一日午前四時、連合艦隊は艦載機を発艦させた。

数は四十。


「衛星写真入りました。敵の主力艦隊から一部が分離している様子。おそらくステルス艦だと思われます」

「..ほぉ、やるじゃねえか」

「艦長、感心している場合ですか」

続いて新たな指示が下る。

「レーガンより入電。敵浸透艦隊の迎撃は日本艦隊に任すとのことです」

「アメ公のワンちゃんは数が少ねえ。アレコにオリペリが五隻だったか?インドもしょっぱいしな。まぁシステムの異なるインド海軍との連携は厄介だ。アメ式のシステムでも入れてりゃいいのによ」

「それは国防上の問題ですから致し方ないかと」

わかってるやいと陸奥は葉巻に火をつけた。

砲雷長がたしなめる。

「禁煙です」

「構うもんか。艦長は俺だ」

「皆が見ています」

「カッコいいだろ?」

「…」

ひゅうがから入電、とコンソールの前の一曹が声をあげる。

「分離艦隊の指揮はこんごう。艦隊はこんごう、きりしま、それとあきづき型六隻。ひゅうがときりさめ以下三隻をは艦隊に残ります」

写真を見る限り敵は十二隻。

八対十二である。

「夜戦なら、自身あるんやっけどね…しゃーなか」

艦隊、面舵一杯。

進路1-9-7。

「俺たちは巡洋艦と駆逐艦の組み合わせで連合軍の大平洋派遣軍を壊滅させてまわった、日本海軍直系子孫の海上自衛隊だ。手前ら、やってやるぞ」

「了解!」〈っしゃああ!〉〈漲ってきた!〉〈ついて行きますよ上級一佐!〉〈夜戦なら負けなしだぁ!〉

将兵のボルテージも最高潮だ。


ひゅうが艦長、峰風一佐は常に近く侍っていた護衛艦隊の不在に寒気を覚えた。

(嫌な予感がする…旗艦もジョージ=ワシントンじゃないからな…連携にも不安が残る…インド海軍も不安要素だ…なんとかあいつらについて行きたいものだが)

指揮官としてあるまじき思考だが、ばれなきゃいいのである。

「艦長、変なことは考えてませんよね?」

「まさか。メリケンと同じ海域にいたくないってわけじゃないぞ?別に攻撃隊が電子戦機を持ちながら接敵に失敗したメリケンと一緒にいたら格が落ちるなんて思ってないぞ?別にインド海軍がヘマをやらかしそうで怖いわけじゃない」

「それなら良かったです」

航海長にたしなめられてしまった。

彼らは同期の桜、嫁よりも長い時間を共有しているため以心伝心そのものである。

空母を飛び立った攻撃隊は、全機無事に何もせずに返ってきた。

「でもエアカバーもなしに派遣は危険じゃないでしょうかね」


「メリケンどもは臆病ですな。俺たちがいないとブルっちまってションベンも一人でできないようだ」

「砲雷長、訂正しろ。"あいつらは一人じゃトイレに行こうともしない"だ」

「ははは」

CICに和やかな空気が広がる。

「対空レーダーに反応。低速弾…トマホーク相当です」

「きりさめ、いなづま、さみだれ…落とせ」

〈..シースパロー撃ち方始め〉

白煙をあげて三隻の艦橋前のVLSからシースパロー対空ミサイルが放たれる。

「本艦CIC指示の目標、目標群α、トラックナンバー2361から2369。…軌道に乗った。十秒前、九、八、七、六…インターセプト五秒前…マークインターセプト。スプラッシュ!」

「よし!」

データリンクによりこんごうが捕捉したミサイルはきりさめ以下三隻にも共有され、彼らのミサイルにより巡航ミサイルが撃墜される。

「俺たち以外は役立たずなんて言うなよ?主力艦隊の空母様もちゃんと偵察機を出したそうだ。完全武装のホーネット四十でもってだ」

「はは。お笑い草ですな」

「さらにミサイル探知!CIC指示の目標。目標群α、トラックナンバー2370から2383」

「ハープーン相当のミサイルです」

こんごうCICで矮躯の陸奥が葉巻を吹かす。

利根はもはや何も言わない。

「シースパロー撃ち方始め。CIWS、速射砲、スタンバイ」

「CIWSよし!」

「速射砲、ステンバーイ!」

敵のミサイルにはまずミサイル。

ついで速射砲とCIWS(機関砲)での迎撃となる。

それと同時にチャフというアルミ箔みたいなものをばらまく。

チャフでミサイルのレーダーを狂わせる方法は、古典的だが結構使える。

「マークインターセプト。..2373、2374、2376の三発の阻止失敗」

()ェ!」

百二十七ミリ速射砲が火を吹く。

「目標ロスト」

「敵艦隊との距離、二万メートル」

ミサイルは全て薙ぎ払った。

そして水平線上に現れる敵。

陸奥はマイクを手に取る。

全艦隊一斉放送だ。

「全艦マストに旗を高く掲げろ…Zだ」

七十年もの沈黙を破り、ついに生まれ変わった日本海軍が牙を剥く。

研ぎ澄まされた一撃は鋭く、重く、精確。

「VLS解放、一番から八番、SSM-1B…放て」

「あきづき、射撃管制レーダー照射」

あきづきに載せられた射撃管制レーダーなら、ステルス艦でも捕捉できないこともない。

「あきづきよりデータ取得。ターゲットセット」

「一番から八番解放」

「サルヴォー、ファイア」

噴煙が、日本海軍の再来を祝すかの如く高く昇る。

旭日旗と黒黄赤青の四色に塗り分けられた旗が、その昇竜を背景にはためいた。


「陸奥のやつがやりおったか…!羨ましいっ」

ひゅうがCICで、峰風が年甲斐もなく地団駄を踏んで歯ぎしりをする。


「こんごうより達する。全艦面舵一杯、最大船速で我に続け!」

「艦長…宣言を!」

「…作戦名:誇り高き(イージス)!打ち合わせ通りにいくぞ野郎ども!」

さっきよりも将兵のボルテージは上がっている。

冷静そうに立っている利根だって、口の中にアドレナリンの味がして止まない。

艦隊は敵にまっすぐ突っ込んで行く。

三十ノットの高速で、帰りのことなど考えず一撃で敵を藻屑にするつもりだ。

「ミサイルすべて落とされました!」

「構うな!速射砲で圧倒しろ!はずしたら八甲田山送りだ!」

そんな馬鹿はここにはいねぇよときりしまの艦長が、目視照準で敵を狙う速射砲オペレーターにプレッシャーを与える。

ステルス艦を相手に大した自身だ。

双方単縦陣での反航戦。

敵もこちらの高速に惑わされて、なかなか近弾を得られない。

〈速度十五ノット!〉

それもそうだ。

不定期的に速度を上下させているのだ。

しかも指示はよいづきの航海長が出している。

彼がこの艦隊で一番操作が上手い、そう評されてのことだ。

八隻は後続との距離は二十メートルもないほど接近していながらも、一糸乱れぬ隊列を組んで驀進する。

「アメ公ども驚くぜ」

〈こんな運用ができるのはウチだけでしょうな。取り舵十二度、増速二十八ノット〉

敵艦隊との距離、五千メートル。

ついに目と鼻の先まできた。

前進中にも放っていた速射砲とミサイルにより、敵は六隻に減じている。

数の上ではこちらが優勢だ。

「面舵一杯!丁字を取れ!」

ついにきた。

Z旗と丁字。

日本海海戦の再現である。

そして艦隊は敵艦隊に猛攻を加える。

飛び交う砲弾、放たれるミサイル、たまに撃つ狙撃兵。

砲弾がふゆつきの煙突基部に直撃するも、攻撃は緩むどころか一層激しさを増す。

対潜魚雷が発射管から圧搾空気で撃ちだされる。

狙うは水上艦。

「これでもくらいな!」

魚雷は航跡も引かずに敵の機関部を破壊。

だがこの距離ではさすがに避けること難しい。

きりしまの艦首に直撃した砲弾のせいで大きく甲板がめくれる。

だがきりしまは止まらない。

ガダルカナルではアメリカ最新鋭戦艦二隻と正面切って撃ち合った、大正生まれのオールドレディ、戦艦霧島の名を受け継ぐ艦がこの程度で止まる道理がない。

艦橋にいるSBU(特別警備隊=海自の特殊部隊)の隊員が、持ち込んだアンチマテリアルライフルで敵を狙撃する。

すでに距離は八百メートルになっている。

すずつきの機関部にミサイルが当たり爆炎が吹き上がる。

同時に最後の敵艦にあきづきのアスロック対潜ロケットが直撃、轟沈。

敵ステルス艦隊は殲滅された。

「諸君、我々の勝利だ」


三十分後には被害の詳しい情報が早くも集まった。

こんごう、あきづきが損傷軽微。

きりしま、てるづき、が小破。

ふゆつきが中破。

すずつきは大破、いずれ沈むやもしれない。


〈自沈させましょう〉

「だめだ。自力でいけるところまで進むんだ。自沈は許さん。諦めるな」

〈しかし…すずつきの介添に付けるべき船はありません〉

艦長たちがすずつきの処遇を話している。

自沈か自力で撤退か。

「ひゅうがの連中を呼び寄せるか?」

〈アメリカ空母の護衛は?〉

〈インド海軍がいるでしょう〉

〈わかりました。故事にならって自力で撤退します〉

故事とは駆逐艦涼月、戦艦大和の最期となった菊水一号作戦に冬月らと共に参加した一隻のことだ。

戦闘で大破に陥り大和ら友軍艦艇も撤退済みか海の底。

自らも艦首に被弾し通信機も故障。

涼月は艦首を海水に浸し、艦尾を突き出しながら潮を掴んで自力後進で佐世保に戻った。

佐世保では沈んだと思われていた艦の生還に皆が慶び、乗員も艦尾に並んで艦のバランスを取りながら手を降った。

必死で戦艦武蔵が入っていたドックに後進で滑り込ませ、ドックの排水を始めたとき、ついに力尽きて着底してしまった。

艦内に閉じ込められた兵士は、脱出よりも艦の維持にその命を投げ打ち、多くの兵士が命を落とした。

艦内に残された死体のなかには、全身を爛れさせながらもバルブにしがみついていたものもあったそうだ。

「..チッ..艦隊指揮官より最優先命令。…生還せよ」

〈…命令、承りました〉

通信からすづつきが抜けた。

「全将兵につぐ。仲間が一人戦線を離脱し、この戦いで五十八名の尊い命が失われた。このままでいいのか?我らが屠ったのは敵の一部に過ぎん。敵の本隊はまだこの蒼海の上でのさばっている!このままでいいのか!」

生き残ったすべての兵士がスピーカーを、陸奥を注視した。

「断じて否だ!我らが使命は、敵の殲滅である!日本男児の誇りと名誉にかけてェ!残存敵艦隊を漁礁に変える!命知らずはついて来い!」


「中将、上級一佐。我々は前進します。仲間を見捨てられない」

〈しかしアドミラル峰風、君たちは連合艦隊の一員だ。防空の要でもある。抜けられたら困るよ〉

「ならば、共に参りましょう?生と死の狭間で、素敵に無様に踊りましょう?」

〈…空母にそれは無理だ〉

「ならばボーキサイト食い潰す前に安全圏の港にお帰りください。無駄に艦載機を抱えて働かない船は友軍ではありません。お荷物です」


ひゅうがとレーガンの間で交わされる交信。

おそらく峰風は引くまい。

仲間を見捨てられないからだ。

〈所詮、空母などデカブツで小回りもきかん文鎮だ。峰風、おもいっきりやってこい。責任は俺が持つ〉

影と髪がうすい金剛上級一佐だ。

ここの日本艦隊の現場最高責任者でもある。

〈駆逐艦ハワードよりレーガン。本艦は日本艦隊の指揮下に入る。合衆国は友軍を見捨てない〉

〈ジャレット、賛同する〉

〈プレブルもだ〉

〈レンツは残り直衛を行う。思う存分やって来てくれ〉

〈レンツでキャリアー二隻は重かろう。ハルゼーも残ろう〉

「感謝する」

これで六隻。

〈インド海軍、ヴィクラマーディティヤだ。シヴァリク、サツプラ、サヒャディの三隻なら貴艦隊に追随できるだろう。迷惑でなければ、パーティーに連れて行ってほしい〉

これまた影が薄かったインド海軍まで参戦してきた。

〈レーガンとステニスをセイロン沖まで下げよう。ひゅうがと九隻はすづつきの迎えに行ってやれ〉

〈任したぞ、峰風〉

「..感謝します。全艦面舵一杯」

〈全艦取り舵一杯〉

艦隊は二つに分派した。

これで空母かやられたら処刑じゃ済まんだろうなと峰風は考えながら、南へ、南へと艦隊を進ませる。

「艦長ぉ!こんごう以下七隻が敵艦隊に直進中です!」

「あんの馬鹿野郎があああああぁぁぁぁぁぁ!」

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