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36. 友達と恋人の違い

(友達と恋人の違い) 


 彼の顔が、優しく見えた。

 両親のことを語ったときの顔……

 今は離れて暮らしていても、今も変わらない幸せな家庭の中に生きているのだと感じられた。

「私も貴方の両親に逢ってみたくなったわ……」

 私は、またタオルで顔を拭いた。


「君は、友達いないのかな?」

「失礼ね……、友達ぐらいいるわよー、彼方こそどうなのよー、女の友達いるの?」

 私は彼を見ないまま、売り言葉に買い言葉で切り返した。

「女の友達、もちろんいるよー」

「そうね、連帯だものね。じゃあ、彼女は、……?」

 訊くつもりはなかったが、物の弾みで言ってしまった。

「彼女は……、いないよー」

「少し考えたわねー」

「だから、どこまでが彼女で、どこまでが友達かなって……」

「そんなの決まっているじゃない。肉体関係があれば彼女で、友達はそこまで行かない人……」

「凄い、生々しい発言で……、じゃあキスは?」

「もちろん肉体関係よー」

 私は、はっきり言った。

「えー、でも、恋愛感情なしでも、こう抱きしめたり、キスしたりするじゃない……」

 私は彼を睨みつけた。

 ここにも性欲だけの狼がいる。

「だから男の人はみんな、狼なのよ。野獣で野蛮で性欲だけで生きているのよー」

 私は、そんな狼と一緒にいるんだ。

「あたりかまわずキスする人、最低……」

 私は、彼に背を向けて言った。

「それもひどい言い方だけど……、最近の女の子にしては古風だねー」

「私のことが古臭いって!」

 振り返って、彼を睨みつけた。

「いや、そうは言ってないけど……」

「古臭くて結構。自分の性欲だけで寄ってくる男にちやほやされても嬉しくないし、挙句の果てに信じて捨てられて泣くのは女ばかり、そんな男に引っ掛かるくらいなら、私は東京の空の下、一人裸で寝るわ!」

 これは、美晴の言葉だ。

 いつしか声が、雨音より大きくなっていることに気がついた。

「どういう意味……、そんな男ばかりではないと思うけど……」

「そんな男ばかりよー、だって、そうじゃない、男なんて風俗行って、お金出せば何してもいいと思っている……、最低!」

「でも、そういう女の人もいるんだから仕方ないじゃん。最近女の子の方がお金出せば何でも、いけいけだよー」

 私は、また腹がたってきた。

 こんな男助けるんじゃなかった。

 彼にもう一度、背を向けながら……

「私は古臭いから、いけいけじゃーないのよ!」

 私は、叫んでしまった。

「だから古臭いなんて言ってないってー」

「彼方も、そういうところ行くの?」

 昇さんの困った顔が面白い。

「いい、いや、行かないけど……」

「うそ、毎日通っているんでしょう?」

「学生が、行けるわけないだろうー」

 昇さんが尚も否定する。

「あなたが誰と援交しようと勝手だけど……」

「僕の話、聞いてない……」

 この男が何をしようと私には関係ないんだ。

 明日になれば、もう通りすがりの人。



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