493 みずみずしい赤い果物
「じゃ、いつものように開会のご挨拶を。誰にしようかな」
レイチェルは、いやな空気を吹き飛ばそうとするかのように快活に言った。
「ううん。挨拶はやめ。チョットマ、あの歌を」
「無理だよ。そんな気分じゃないし」
「違うのよ。こんな時だからこそ、こんな気分だからこそ切り替えなくちゃ。空気を入れ替えなくちゃ」
チョットマの歌の先生、一つ目のお姉さん、ミフュが立ち上がった。
「それじゃ、私が」
結局、歌の途中からチョットマも加わった。
皆が歌った。
チョットマの目に涙が光っていた。
歌が終わって、さあ、というとき、スミソが戻ってきた。
レイチェルが、
「いけない!」と、顔を輝かせた。
「うっかりしてた!」
「ん?」
「ボニボニの後任。スミソ」
「おっ」
「あなたを警察署長に任命します。警察は防衛部の管轄だけど、今まで組織改編は実質的にできなかった。でも、そろそろかな。スジーウォンとスミソ、相談して」
「承知しました」と、スジーウォン。
「トゥルワドゥルーの後任には、イコマ・アヤ、あなたを指名します」
「えっ」
「はあ、大事なことをすっかり忘れてた。これだから私、長官は務まらないのよ。ねえ、ンドペキ」
「おい!」
「選挙までの暫定局長だけど、受けてくれるでしょう?」
スミソはその場で敬礼し、アヤは、
「親友の頼みだったら断れないよね」と、ンドペキとスゥ、そしてイコマとユウに、いいよね、というサインを送ってきた。
「イッジ、ミタカライネン、いろいろ教えてね」
「こちらこそ、よろしく」
スゥが本当のパーティの始まりに相応しい素晴らしいものを運んできた。
「これ、とっても貴重なのよ。なんとなんと、スミヨシファームの初物。アヤちゃんとチョットマに」
大きなガラスの器に盛った真っ赤な大粒のイチゴ。
「練乳たっぷり掛けておいた。好き嫌いはあるけど、私はその方が好きだし」
アヤとチョットマだけではない。
シルバックとジルはもとより、アングレーヌやサリ、レイチェルやイッジでさえ、そのみずみずしい赤い果物に見入っていた。
「みんなにもぞれぞれ、ハッピーになるもの、あるからねー!」




