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491 君を愛すと

 もうこれ以上、解説することは何もない。

 イコマは、スゥが作って入れたむかごご飯を茶碗によそいながら、思った。



 どんなにイペを追い詰めようと、もうボニボニから真実は聞けない。


 あの、殺戮の日。

 身を挺してイッジを守ったボニボニ。

 血を吹き出しながら遠くへ飛ばされていったボニボニ。


 あの時、ボニボニと目が合った。

 あいつの目に悲壮感はなかった。

 すでにこと切れていたが、澄んだ瞳。

 きらきら輝いて、どうだ、とでも言いたげな光が宿っていた。 



 ロームスの実験。

 ロームスの関心。


 愛とは何か。

 愛の力とは。

 愛によって生み出されるものとは。


 様々な愛の形。

 それが変化する様。

 己になかった感情。


 人の感情の中で最も強いもの。

 だから人のシンラはとてつもなく強い。



 思い起こせば、あれもこれもそうだったのだろう。


 パリサイド星域に到達した宇宙船スミヨシの街で。

 アヤの元夫がアヤを道連れにして死のうとしたあの事件。


 タァーレルとキャンティもその実験の被害者かもしれない。

 アンドロという、制約された感情しか持たなかった「種族」が、生粋のパリサイドを愛したことで生成されたシンラは、どんな力を持っていたのだろう。


 パキトポークとアイーナの愛の形も。

 ロームスに心を支配され、人々を恐怖に陥れた彼らの心の底に残されていた愛の欠片は。

 その心の有り様は、どんな変化を見せていたのだろう。


 ユーペリオン市民の間に生まれ始めていた俄かな恋心。

 これが殺戮の恐怖に晒されて受けた影響。

 これも、ロームスは見ていたのかもしれない。


 まさに狂人となり果てたジェドリとニェメトも、標的だったに違いない。



 ボニボニが引き起こした今回の事件。

 トゥルワドゥルーにレイミを紹介したところから始まった一連の出来事。


 友人であるトゥルワドゥルーへの純粋な厚意だけだった、とは言い切れない面はあるかもしれない。

 競争相手、恋敵だと見ていたのなら。


 ボニボニがとったすべての行動。

 それはイッジのために。

 イッジに捧げるために。

 イッジを守るために。

 イッジに見せたいがために。

 イッジに伝えたいがために。


 君を愛すと。



 ただ、ボニボニはイッジに自分の気持ちを言葉として伝えることはついになかった。


 ボニボニという男の最期。

 身を挺してイッジを守るという行動によってのみ、気持ちを伝えようとした、あの最後の瞳。


 悲しいかな。

 そこにも、ロームスの意識が働いていたのかもしれない。

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