489 空しすぎる……
イコマはイッジを見た。
話しはしないけど。
きっと君も、そう感じていたのではないかという目で。
ボニボニがイペを完全に信用してはいなかったことは、別のことでもわかる。
ジェドリとニェメト。
彼らを逃がしたのだ。
人知れず。
ボニボニなら可能だ。
容易いこと。
元々、警察官はわずかしかいない。
好都合にも怪しさ満点の二人を発見し、拘束できたと言える。
こいつらに罪を着せればいい。
どうせユーペリオン市民ではないし、波風も立たない。
ボニボニは、ついている、と思ったはず。
かといって、拘束し続ければ、ボロが出てくる恐れがある。
いくら、おざなりな追及でお茶を濁すとしても。
いっそのこと、また身を隠してくれた方がいい。
案の定、二人は一目散にシェルタに駆け戻っていった。
これで、二人を犯人に仕立て上げることができる。
見えない敵として。
しかし、残念なことに、岩盤の崩落が起き、その決壊によって洪水が起きた。
彼らは水死体で発見された。
パリサイドの免許皆伝技を使えるという前提に赤信号が灯ったわけだ。
やはり、当初の予定通り、イペを犯人に。
こんな話……。
空しかった。
空しすぎる……。
もうイペは謝罪の言葉どころか、悔恨の言葉さえなく、黙って俯いている。
肩を震わせるでもなく、誰かに救いの眼差しを向けるでもなく、部屋の隅に置かれた無彩色の彫像のように。




