482 何度も言わせるな 誰に?
仮説には二つのパターンがあった。
ひとつは現時点で崩れ去り、ひとつだけが残っていた。
それが真実だ。
「もう一つの質問にも答えていないぞ。誰に誘われたんだ?」
「脅されたのよ!」
「何度も言わせるな。誰に?」
短い沈黙を置いて、イペが叫んだ。
「誰だっていいでしょ!」
「馬鹿なことを言うんじゃない。これは殺人事件だ。犯人を知っていて黙っている気か?」
アヤが言った。
「ボニボニ」
同時につぶやいたイッジ。
「やっぱり、ボニボニだったのね」
なんということだ。
それをイッジの口から言わせてしまうとは。
イコマは自分の話の進め方のまずさを呪った。
よりによって、イッジにその名を言わせてしまうとは!
くそう!
イコマはイペにその怒りをぶつけた。
「そうか。自分の恨みをボニボニに晴らさせ、罪はサスケイに着せようとしたわけだな!」
「ち、ちっが、う!」
「ボニボニと結託し、サスケイを誘い出すために狂言を打った。容疑者として一旦は逮捕された。もちろん自分自身が疑われないようにするために。そうしておいてサスケイが出てくるのを待ったんだよな!」
「くっ、ぐっ!」
「お前は、何度も留置場のサスケイを見舞った。愛しているとか言って、泣き崩れてみせた。でも、それはサスケイを犯人に祭り上げる、つまり誰もがそう信じるように打った芝居だよな!」
「……」
「僕を助けてくれたことは忘れていない。礼を言う。ありがとう。でも、そのあと、散々のろけてみせてくれた。あれも、嘘っぱちだったんだよな!」
「……」
「サスケイの前で涙を流し、率先してボランティアに参加し、それなりに「優しくて思いやりのある女性」を演じておれば、自分は安全圏!」
「……」
「ボニボニに脅されたんじゃない。ボニボニの話に飛びついたんだよ、いや、利用したんだ、お前は!」
「……」
さっき僕は、トゥルワドゥルーがレイミに脅されていたことを話した。
イペ、僕はお前に最後のチャンスをあげたんだ。
その時点ですべてを打ち明けてくれて、ボニボニの名前を挙げて脅されたんだと言ったら、そういう方向での解決もないではなかった。
心に引っかかるおかしな点がいくつかあっても。




