475 無実の市民を拘留してしまった
「タァーレルはどんな供述を?」
ボニボニ署長がかなり厳しく追及した。
でも、成果は全くなし。
あいつが言うには、最初に事情聴取の時にいなくなったわけは、大事な約束があったから、と言うだけで。
その約束が何かも、相手が誰かも、一切口を割らない。
後になって分かったことだけど、ベータディメンジョンの調査だったんだな。
キャンティとのデートを兼ねた。むしろ、こちらが「大事な約束」
「そうだね」
アンドロらしい律義さというべきなのだろう。
恋人とのデート。
そんなことなら話してもよさそうなものだが、ベータディメンジョンの調査については、口外できぬと考えていたのだろう。
「釈放するわけにもいかず、手をこまねいていた。というより、多忙にかまけて、放っておいたと言う方が正しい。そこに、署長からイペを捕まえてこい、という指示が出た」
「こちらの方は、ナイフという物的証拠を伴った容疑。自然と、タァーレル犯人説は後退していったんだな」
「そう。そして、サスケイが自首してきてイペは釈放された」
「そして、忘れられた存在ともいえるタァーレルは、気の毒に取調室で死んだ」
スミソが首をすくめた。
「驚いたよ、僕は。誰か、弁当に毒でも盛ったのかって。でも、そんな死に方をしていても、署長含め元パリサイドだった奴はケロッとしていたね」
タァーレルの死因。キャンティの死因。
これはパリサイドの世界では普通のことだった。
ロームスにとって何か気に入らないことがあれば命を奪われる。
あるいは何らかの実験の一フェーズだったのかもしれない。
いずれにしろ、ボニボニにとって二人の死に様は意外なことではなかった。
タァーレルの亡骸を見て、無実の市民を拘留してしまったな、申し訳ないことをしたな、と呟くのみだったそうだ。




