471 どうしようもない時期
こんな話をしていても、もうイペに何の反応もない。
フォークを動かすでもなく、誰かと顔を見合わせるでもなく、じっと下を向いている。
「とにかく、なぜイペは正直に話さないのだろう。それが疑問だった。盗まれたから、新しいナイフが必要になった。それで筋は通るじゃないか。嘘をつくとしても、料理が好きだとか言うより、その方が自然じゃないか」
イペがちらりと目を上げたが、すぐに目を伏せてしまう。
「後になって、僕は考え直した。実はこういうことじゃなかったのか」
つまり、新しいナイフを申請した時、イペは、知らなかったのかもしれない。
レイミの胸にナイフが突き立っていたことを。
それを知っていたら、私のナイフが盗まれた、まさかあの犯行に私のナイフが使われたのでは、と警察に申し出たかもしれない。
実際はどうだったのだろう。
自分にやましいことがなければ、警察に届け出ないだろうか。
いくらでもナイフが手に入る世の中なら、黙っているかもしれない。
しかし、ここユーペリオンではそうはいかない。新たなナイフを申請する、つまり当局に筒抜けとなるリスクを負わなければならない。
それでも黙っているだろうか。
それに、チョットマに見られるようなところに、つまり、オフィスの机の上に、新しいナイフを置いておく、なんてことはしなかったはず。
「どういうことか、理解できる?」




