468 私のお守りみたいなもの
そう言ったりきり、また黙り込んでしまった。
イコマはこれ以上、話をする気がなくなってきた。
なんて女だ、という気持ちが胸に押し寄せてきて、息苦しい。
イッジと目が合った。
幾分青ざめているが、大丈夫のようだ。
母を亡くし、許婚を亡くし、自分の信奉者ボニボニまで亡くしたイッジ。
これ以上、この可哀想な娘を追い込む必要はあるのだろうか。
真実を目の前に突きつける必要はあるのだろうか。
悲しませるだけのことではないのか。
しかし、その心を読んだかのように、イッジは、ひとつゆっくりと瞬きをした。
どうぞ、その先を、というように。
「一息入れよう」
イコマは自分のためにもそう言った。
「楽しい食事会になるはずがないのは分かってるんだから、そんなに深刻な顔してないで。食べようよ。でないと、僕が後でスゥにどつかれる」
そしてイッジの元に行った。
「本当にすまない。いろいろ聞きたくないことばかり出てきて」
小さく微笑み返すイッジ。
「こちらこそ、いつぞやは失礼なことを申し上げ、本当にすみません」
「いや、謝るのは僕の方。ついカッとしてしまって。君がどんなことに巻き込まれているか、思いも至らずに」
「いえ、それはそれ、あれはあれです。すみませんでした」
「頬、まだ痛む?」
イッジは、手をまた頬にやった。
「いいえ。私のお守りみたいなもの。あなたにぶたれた頬が」
そして、微笑んだ。
キョー・マチボリーの杞憂は全く的を外していたというわけだ。




