465 事実と、正しいと思われる推論はこれだけ
「ソウルハンドを使えるパリサイドか……」
コリネルスがまた呟いた。
「パリサイドと言っても、かなりたくさんいるぞ」
イコマは陽気に応えた。
「そう。ここにいる人だけでも。イッジだけじゃない。ユウもそうだし、アングレーヌもそう。アヤもそうだしチョットマもそう。スミソも。僕だってそうだ。元パリサイドという意味では」
「なるほどな」
「人を殺す動機なんて、憎しみや嫉妬というようなシンプルなものだけじゃない。憎しみや嫉妬がきっかけにはなっても、それがすべてか、というとそうでもない。人を殺したいと思ったことがないからよく分からないけどね」
もうひとつ。
ロームスの実験。
愛という感情を調べる実験。
しかし、解説はしない。チョットマとの約束だ。
それに、この情報がなくとも解ける謎だ。
「そろそろ、解説も最終段階が近い。休憩するか?」
ふざけるな、とンドペキ。
「じゃ、よく聞け。酔っ払いめ」
凶器はソウルハンド。
犯人は元パリサイド。
ナイフを突き刺し、一見、元パリサイドの犯行ではないように装った。
レイミの胸に突き刺さっていたナイフはイペの物ではない。
イペのナイフはレイミの部屋にあった。
胸に刺さったナイフはレイミ自身が持ち出したものではないか。だが証拠は無し。
トゥルワドゥルーはレイミに脅迫されていたが犯人ではない。アリバイがある。
レイミは誘い出された。
レイミに不安や恐怖を抱かせずに、フェアリーリングに誘い出せる者によって。
死体があの場所に残されていたことには、何らかの意図がある。
ジェドリとニェメトは無関係。
事実と、正しいと思われる推論はこれだけだ。
あまりに少ない事実。
しかも、核心的でもない。
仮説というのもおこがましい、想像ばかりが目立つ。
しかし、胸の中では、もう答はひとつ。
「どうだい?」
これが最後だ。
自分が立てた仮説以外のアイデアを問うのは。
名乗りを上げる者がいなければ、自分の仮説を「結論」として話すしかない。
そして、後は賭け。




