461 死体がなぜそこにあるのか
「おかしな点。つまり、死体がなぜそこにあるのか、ということ」
「どこかから運ばれてきたとか?」と、ンドペキ。
ンドペキにしては、今度は上々の合いの手。
「惜しい。でも、そうじゃない。なぜ死体がそこにあるのか、だ。別の所で殺されて、あそこに運ばれてきたとは考えられないだろ。そうする意味がない」
ンドペキが目をトロンと向けてくる。
分かっていないらしい。
しかたがない。説明するか。
「犯人が死体を移動するのは、死体を隠したり、発見を遅らせたり、あるいは犯人にとって都合の悪い何かを隠すためとか、アリバイを偽装するとか、いろいろある。つまり、何らかの意図があるよな。でもこの場合、そんなことをすること自体、不自然」
「どう違うんだ!」
「全然違う」
「意味が分からん!」
「いいか? 奔流を目の前にして、死体がなぜそこに残されていたのか、だ。殺してから放り込んでもいいし、殺さなくても突き落としさえすればレイミの命はない。なのに、なぜ? 犯人はなぜレイミの死体をそのままにして立ち去ったのか。死体を運んできたとすれば、なぜ、水流に放り込まない?」
「うん?」
やはり、酔ってしまったンドペキに相方は無理だ。
嬉しいことにコリネルスが言葉を繋いでくれる。
「死体があそこに残されていたこと自体が奇妙。しかも、あそこで殺しておいて。なるほど」
「その通り」
「犯人が誰であったとしても、あの場所、フェアリーリングに死体を残してあったことに意味があるのでは、ということ、だよな?」
「さすがコリネルス、頼りになる」
ナイフのこと。
死に顔のこと。
そしてもう一つ、明らかな不自然さ。それが、これ。
放り込みさえすれば人を殺すことができ、死体をこの上なく完ぺきに隠してくれる奔流を目の前にして、なぜ死体はそこに残されていたのか。




