454 僕をミスリードしようとした
ナイフに関心が向いた訳。
本当にそれが凶器なのか、という思いがあったからだ。
「実は、もう一本ナイフがある」
また紙袋から取り出したナイフは、まだビニールの袋に包装されたままのもの。
「未使用のナイフ、これもレイミの部屋にあったもの」
こちらの方は、イペは首を横に振るだけ。
やっぱり話を難しくしようとしていると言い募るンドペキを無視して、イコマはイエロータドに向き直った。
「イエロータド、再度質問だ。あんた、香りを強調してたよな」
「……ああ」
「それは、今この部屋に香っている、これか?」
「ん」
と言ったきり、イエロータドは黙り込んでしまった。
「これはきっとコロンの香り」
「……」
「独特の香り。なんとなく思い出す。子供のころ嗅いだオシロイバナの香りのような。でも、ユーペリオンではコロンをつける人は珍しい」
「……」
「それが犯行現場に残されていた」
「……」
「イエロータド、あんた、僕をミスリードしようとした。そうだな?」
ミスリードという言葉がこの場合、正しいのかどうか分からない。
しかし、あえてその言葉を使った。
「独特の香りがそこに残されていた。実際、それは事実。マスターは嘘を言ったわけじゃない。あくまでそれを、あえて思い出させてくれたわけだ」
そんな香りがしていたことを、スゥやチョットマから聞いている。
今も、微かに香っている。
空気の動かない洞窟の、その最奥部のグロット。
そこに残されていたかすかな香り。
イペの香り。




