447 カタクリをまぶして素揚げに
「犯人は誰か。思うことがある人は言って欲しい。食料局の誰かではなく、バーの誰かではなく、僕らの知らない誰かではなく、行きずりの誰かでもなく」
となれば、犯人は絞られてくる。
「サスケイ」
と、具体的な名を挙げたが、依然反応なし。
「彼は自分がレイミを殺したと言っている。犯人最有力候補であることは間違いない。もし、彼が犯人でないとしたら、それはイペを庇って、ということになる。思い出して欲しい。あの頃、イペは容疑者として拘留されていたんだ」
イペは眉間に皺をよせて、黙って下を向いている。
彼女にしてみれば、自分はもちろんサスケイの自白も認めたくはない。
「今回の事件」
サスケイが名乗り出たからといって、はい、それで一件落着というわけにはいかない、と僕は感じた。
そう感じた理由、それは分からない。
引っかかるものがあった、としか言いようがない。
強いて言えば、サスケイの動機についての陳述が、いかにもそつがなかったから、とでも言えばいいだろうか。
あんなにすらすらと話せるだろうか。
もう六百年以上の前のことを。
マトだったのに。記憶が失われていくマトだったのに。
シャワーも浴びずにとか。
去年のある夜のことでも、そんなこと、覚えていられるものか?
マトになる以前のことだぞ。
違う、という気持ちが頭から離れなかった。
しかもその「違う」は、強まるばかり。
話が重くなり過ぎた。
場を和ませよう。
「スゥ、この甘エビの頭、どうした?」
イペは顔色が悪い。
下を向いて、まるで彫像のように身動きしない。
無理もない。
この会によく参加してくれたものだ。
「ノブ! 私を誰やと思ってるん!」
と、スゥも雰囲気を察して朗らかに返してくれる。
「ノブが好きやったもの、ちゃーんと分かってます。もう少ししたらカタクリをまぶして素揚げにするから」
「そうか!」
スゥが、そしてユウが声を出して笑ってくれた。




