445 たちまち罠に掛かってしまった
「ちょっとここで確認しておきたいことがある。可能性をいくつか排除しておきたい」
レイミの交友関係、これはこの世界にしては広かった方、ではないか。
胸の中のリストに挙がっている者以外に、疑うべき者はいるだろうか。
職場である食料局の誰か、またはバー・ヘルシードの客の誰か。
あるいはそれ以外。例えば、住まいの近くの隣人。場合によっては行きずりの誰か。
これらを全く無視していたわけではない。
「シルバックとジルに話を聞いて回ってもらった。二人とも食料局の職員でレイミの同僚。で、分かったことは何もない」
レイミの美貌とポニーテールは有名だったが、ただそれだけのことで、親しかった者はいなかったという。
言い寄った男もいなかったようだし、妬んでいた女性の噂も聞かなかったという。
「もちろん、彼女が殺された後のことだから、進んで親しかったと名乗り出る者はいないだろう。でも、どんな噂もなかった。レイミは仕事はそつなくこなしていた。かといって、目を見張るほど優秀だったとか、努力家だとか、そういう話もなかった」
それは何となく頷ける気がする。
レイミはニューキーツの出身ではない。アレクサンドリアの数少ない生き残り。
元からの知り合いはほとんどいなかったはずだ。
それに、チョットマがレイミの本性を見破れなかったのだ。
きっと、目立たぬように、慎ましやかに勤めていたのだろう。
チョットマがレイミと知り合ったきっかけを聞いたことがある。
レイミの方から声を掛けてきたのだという。
人をたらし込む技にかけては百戦錬磨のレイミ。チョットマはたちまちその罠に掛かってしまったというわけだ。
レイミがチョットマに近づいた訳、それはご想像の通り。
有名人のチョットマと近しい仲になっておくことに、なにかとお得感があったに違いない。




