442 言わなくてもいいのに
と、イッジが口を挟んだ。
「発言してもいいですか?」
どうぞ、と言わざるを得ない。
イッジはチョットマと手を繋いでいた。
これまで考えられなかったシーン。
イッジがその手を放し、チョットマの手が名残惜しそうに宙にあった。
イッジの手は、なぜか、頬に。
イコマが平手打ちした方の頬に。
「今のお話の中で、私が知っていることをお話ししたいと思います」
言わなくてもいいのに。
しかしイッジは、そう。心の中に太い芯が通っている。正義漢。
たとえ自分の恥になっても、事実は事実として正しく受け入れる。そして公表する。
隠したままでいることなど、彼女の考えの中にはないのだ。
「私は女です。許婚が脅迫され、金品を渡していることは、ボニボニから匂わされるまでもなく気づいていました。ただ、結婚式の日取りを決めなかったのは、そのことが関係していたわけではありません。ただ状況が許さないと判断したからです」
毅然としてイッジは、そう言って、死んだトゥルワドゥルーの名誉を少しでも守ろうとしているかのようだった。
「彼は魔が差したわけでもありません。知り合った相手が悪かったのです。彼は被害者です」
トゥルワドゥルーもボニボニも、もうこの世にない。
トゥルワドゥルーは、ソウルハンドを使おうとアイーナに抱きつき、撃退された。
ボニボニはイッジを守ろうと盾になって切り殺された。
彼らは彼らなりに、己が正義と思うところを見せて、死んだのだ。
「私は、トゥルワドゥルーを今も愛しています。窮地に陥った彼を救えなかった自分を恥じていますし、責めてもいます」
そう言って、目を伏せる。
「最後に、とても大切なことをお話しします。レイミが殺されたと知った時、私は罪を犯しました」




