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439 座ってよ、嵩高過ぎるし
「タァーレル。彼にはアリバイがあった。時間的には必ずしも明快とは言えないが、その前後の行動を考慮すると、犯人とは考えにくい。この結論に異論はあるかな」
誰も何も言わない。
食べることに忙しいこともあるが、そんな結論を誰も期待していない。
イコマはこの問題をあっさり片付けた。
「では、次の証人は」
誰にしよう。
「イエロータド、あんただ」
「えっ、俺が、か?」
「そう。ただ聞くだけじゃつまらんだろ。それに話したそうにしてるぞ」
バー・ヘルシードのマスターは、ポンと立ち上がったものの、
「いや、俺は、そんな、閣下がご臨席されている、このようなところで、いや、待ってくれ」
と、逡巡している。
「何をごちゃごちゃ言ってる」
「だからだな、俺には、その、えー」
しかたがない。
「それじゃ、こっちから質問するからあんたが答える。これならできるか?」
「あ、そ、そういうことなら……」
「立たなくていいぞ」
「しかし」
イコマはイエロータドに代わってレイチェルに目配せした。
座ったままで、というレイチェルの許しを得ても、アンドロであるバーのマスター、レイチェル直属の部下は直立不動のままだ。
「座ってよ、マスター、嵩高過ぎるし」
チョットマに言われて、ようやくイエロータドは座り込んだ。
背筋を伸ばし、両手を床に付けて。




