436 闘いは始まっている
次にコモレビーことロームスは、こう言った。
ーーーー闘いは始まっている。
闘いとは?
ロームスと人類の間の戦いではない。
あり得ない。
力の差がありすぎて、戦いにもならないし、むろんロームスにはそういう捉え方はないはず。
キョー・マチボリーが相手でもない。白い霧の状態ではないロームスであれば、同じく戦いという言葉は当てはまらない。
ロームスつまりコモレビーと、他のロームスとの間の戦いではないか。
チョットマの中に住んでいるロームスは、チョットマの愛の強さに触れた。
アヤの愛の強さにも触れた。
その結果、ロームスという集団の中で、自我が芽生えたと考えてもいいのではないか。
ロームスのネットワークから離れ、独立した存在として動き始めたのではないか。
チョットマの中にいる一つの粒子群としてのコモレビーだけではない。
ここユーペリオン市民の中にいるロームスがそれぞれ自己を獲得し始め、今までとは異なるネットワークを作り始めた。
いわば、反乱。
これがコモレビーが言う「闘い」ではないだろうか。
このユーペリオンでは、今や、コモレビーは勝利している。
実際、あの百人以降、パリサイドになった者はいない。
パキトポークの襲撃に呼応して殺人鬼になった者もいない。
一粒のロームス粒子、あるいは粒子群の思考能力はたかが知れている。
集団であってこそ、大きなネットワークがあればこそ、思考が成り立つ。
あの頃、一言一言が短く、かつ間隔も開いていたのは、コモレビー側の集団がまだ小さく、長い言葉を紡ぐという高度な思考ができなかったのではないか。
だが彼らは、徐々に力をつけた。
つまり、ロームス粒子がコモレビー派に次々と寝返っていった。
ここユーペリオンでは。
ーーーー邪魔が入った。
ーーーーあいつめ、こちらの考えも知らずに余計なことを。
ーーーー黙らせてやる。
という言葉。
これはキョー・マチボリーの目論見に対して発せられた言葉だったが、それほど長い言葉を口にしたということは、その時点までにコモレビーが一気に力をつけたことにほかならない。
つまり、コモレビー側の集団もそれなりに大きくなり、ネットワークも強固なものになったわけだ。




