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434 愛をもって敵を制す

 セオジュンの話は、レイミ殺害事件には直接的な関係はなかったかもしれない。

 今ここにいる者のほとんどはそう思ったことだろう。


 それでいい。



 パキトポークとアイーナがなぜ、パリサイドに変わり、人々を襲ったのか。


 この背景や原因を考えると、当然ながら、ロームスに行きつく。

 しかし、チョットマから聞いた話を披露する気はない。

 もう済んだこと。

 ロームスの実験は。たぶん。

 とりあえず、今のところは。

 それに、チョットマとの約束だから。



 チョットマに声を掛け続けたコモレビー。

 功労賞はチョットマだが、それはユウの言葉があったから。

 が、実は、コモレビーにも注目しておかねばならない。


 そいつがあの襲撃の直前に話し掛けた言葉が、チョットマにヒントを与え、結果として人々を救ったとも言える。


 このことを知る者はごく少ない。

 家族六人以外には、レイチェルとサリ、アングレーヌだけ。

 そしてこれも、ここで話すつもりはない。



 チョットマはもちろんその言葉を忘れることはないだろう。

 だが、イコマはそれを記録として残し、市民の目に触れないところで保管し、歴代長官が申し送りしてくれるようにとレイチェルに頼んである。


 なぜなら、海底にはまだ、パリサイド百人が潜んでいる。

 不気味な存在。


 今回の実験は終わったとしても、またいつ始まるか分からない。

 どんな形で始まるかも全く見通せない。

 その時、愛をもって敵を制すという対抗策が人々の記憶に残っているとは限らない。

 もし、次の実験が百年後だとすれば。

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