431 それまではスイートホーム
シルベスの能力は限界値を超えていた。
しかも、ベータディメンジョンのエネルギー嵐はいよいよ強くなるばかり。こちらの次元の太陽フレアの嵐が影響しているはずはないが、ここ何百年なかったこと。
池の底にいても、僕とニニには外の様子は手に取るように見えていた。
時として荒れ狂うエネルギーの暴風に人々は次々に倒れ、飲み込まれて跡形もなく消えていった。
そんな時だ。
チョットマが池の底まで下りて、会いに来てくれたのは。
気づいていたけれども、目を開けて声を掛けるわけにはいかなった。
アンジェリナの意識がシルベスの装置に向かっている。
僕の意識が外に向かい、声に出せば、アンジェリナの意識を揺らしてしまうかもしれない。
シルベスの装置が不要なものになれば、あるいはアンジェリナの肉体、つまりシルベスのパワーアップのためのキーが不要となれば、アンジェリナは自ら目を覚ますと聞いていた。
パキトポークとアイーナは仲良くやっていた。
まだ工場はかろうじて稼働していたから、食物や飲料水はあったし、荒れ狂うエネルギーに運悪く当てられさえしなければなんとか生きていけた。
しかし、徐々に人々の姿は消えてゆく。
どうしても二人を見ていることが多くなって、盗み見をしているようで申し訳なかったけれど、二人の関係も分かってきた。
イッジは知っておきたいだろうから、少しだけ話しておくと、二人は上司と部下の関係だった。
形の上ではアイーナの下でパキトポークが働いていたということになる。
むしろ、相棒という方がいいかもしれない。
仕事の内容までは分からなかったが、よからぬことも含んでいたようだ。
二人は互いに惹かれ合っていた。
大昔から。
ただ、それを両人とも告白することはなかったようだ。
アイーナはどうしてももう一度、パキトポークに会いたいと思っていた。
地球から人類が避難してきて、パキトポークがベータディメンジョンにいることが分かって、アイーナは自ら出向くことを決意したようだ。
もちろん、宇宙船スミヨシから第二陣がやってきて、二人揃ってホームディメンジョン、つまりこちらの次元に戻れることを確信していた。
第二陣まで待つことになったのは、ゲートまで歩く体力がパキトポークには残っていなかったから。
でも、それまではスイートホームというわけです。




