428 お料理、取ってからね
思い起こせば、ここ数年の間に、こういうシーンは三度あった。
回を追うごとに和やかな雰囲気が漂ってきたのはどういうわけだろう。
最初はレイチェルが殺され、泣きじゃくるチョットマを見つめながらの会だった。
スゥの洞窟で息が詰まるような話をしたものだ。
二度目は太陽フレアによって地球人類は滅びかけ、命からがら宇宙船に乗り込んだ時。
そう、今目の前に座っているセオジュンの失踪について種明かしをしたのだ。
三度目はパリサイド星域から地球に逃げ帰り、ライラやプリブのことを話したのだった。
ライラのあのキューブ、アヤは今も大切に持っている。聞き耳頭巾の布に包んで。
そして今、人類は、その種を維持していけるかどうかの瀬戸際にある。
ロームスの実験が終わったという確信もない中、緊迫し、絶望ともいえる状況にある中での話になる。
だが、ここにそんな空気は微塵も感じられない。
強くなったからか。それとも慣れか。
違う。
空気の違う理由が、人々の心にあることをイコマは感じていた。
人と人の間の絆が強まり、人らしい喜びを取り戻したから。
誰かが誰かを好きになる。
誰かが誰かに恋をする。
そんな当たり前の心を取り戻したからではないだろうか。
だから、どんな時でも精一杯、今ある命を大切に、今の喜びがたとえ小さくたって、身を委ねたい、そう思えるようになったからではないだろうか。
「あ、イコマ、ごめん、ちょっと待って」
座り込んだレイチェルが手を挙げた。
「お料理、取ってからね。でないと、スゥに怒られちゃう」




