418 すべての感情、すべての感覚、すべての記憶、すべての想い
イコマ由来のシンラは易々とその星に到達した。
星は超光速で飛んでいるが、まるで止まっているように見える。
それはイコマ由来のシンラもそのスピードで飛んでいるから。
シンラに速度という概念はない。
ここに存在し、同時に宇宙の果てにも存在できる。
空間や時間の概念を超越した存在。
イコマが子供だった頃、思いを馳せたさそり座のアンタレス。
そこにあったイコマのシンラも、数年前、太陽を恨んで太陽表面に漂っていたシンラも、そして母の胎内で秘かな感覚を得たその時から生み出され続け、地球表面に無限に存在するシンラも、今はすべてここ宇宙の果てに集結している。
まるで絵のように見える目の前の青白い星に向かって、イコマのシンラは何をすべきか知っていた。
持てるエネルギーを、この星が飛び続けるために使うのだ。
たった一粒のシンラが崩壊するときに放つエネルギー。
それは太陽をも消滅させるほどの力を持つ。
それをこの星にぶつけるのだ。
イコマが生み出した無限のシンラが為すべきこと。
この星をもっと速く。
もっと遠くへ。
宇宙を拡大し、他の宇宙との凌ぎあいに勝利するため。
闘いは永遠に続く。
そう、永遠に。
だから、星にエネルギーを与え続けるのだ。
宇宙が生まれてからずっと続いてきたように、これからも永遠に。
無限ともいえるシンラが、すべて消え失せてしまうまで。
そして役目を終えたシンラは、この星の一部となる。
宇宙に数多存在するすべての生命体。
その存在理由。つまりはシンラを生み出すためのもの。
すべての感情、すべての感覚、すべての記憶、すべての想い。
これらが強ければ強いほど、その振幅が大きければ大きいほど、生み出されるシンラは多く、宇宙の拡大は加速度を増していく。
宇宙という視野で見た時、生命の本当の役割は、生きるためにあるのではない。
その命が終わった後に、その役割は始まるのだ。
人はそれを、地獄と呼んだ。




