417 シンラ
シンラ。
それは「意思」が生み出した素粒子。
「意思」とは。
すべての感情、すべての感覚、すべての記憶、すべての想い。
人だけのものではない。
ミドリムシも、ベンガルトラも、踏み潰したアリンコも、口に入れたシジミ貝も。遠い星に棲む数多の未知なる生物も。
生あるものが「意思」を持った時、発散されるもの、それがシンラ。
太陽が生まれるはるか昔、銀河が生まれるはるか昔から。
生成され続け、宇宙に蓄積され続けてきた素粒子。
シンラが生み出すエネルギー。
すなわちプリミティブエナジー。
宇宙を動かす源。
宙を膨張させ、他の宇宙からの侵略を食い止める。
他の宇宙を侵略する。
目の前にあるもの。
これまで見たこともない星空。
空を埋め尽くす星々の競演。
横たわるミルキーウェイ。
とすれば、ここは天の川銀河。
きっと太陽系。
僕が生まれた星、地球。
故郷の天体。
しかしその光景はたちまち消え失せた。
目の前には、たった一つ、青白い星。
イコマは知っていた。
この星が宇宙の最果て、外周部を形作る星の一つであることを。
青い球体の先には何もない。
暗黒があるだけ。
光を発するものは何もない。
無音の世界。
温度というものがない世界。
まさになにも存在しない世界。
この星は、光をはるかに凌ぐ速度でユリウス宇宙の外側に向かって飛んでいる。
超高温の星。
すなわちこの星はシンラが凝縮したもの。
銀河系全体の質量をはるかに上回るシンラを、わずか直径数百キロメートルという小さな球体に押し込めた星。
人は見ることはできないし、知ることさえできない。
遠く遥かな小さな星。




