478 あなたはあなただから
「イッジ……。ごめんね」
「ママ! 私の方こそ! ごめんなさい!」
レイチェルのマイクから、二人の会話が聞こえてくる。
「一番それを恐れていたこの私がロームスに操られてしまった。こんなことをしでかしてしまうなんて……。皆に……」
アイーナが腕を上げた。
市民に見せようとするかのように。
そして、上げた手をイッジの髪に持っていった。
「イッジ」
「ママ!」
「あなたを捨てわけじゃないのよ。分かって。第二陣が来てくれると思ってた。それがこんなことになって」
「ママ! 私、誤解してた! ごめんなさい!」
「ううん。悪いのは私」
「ううん! そうじゃない! そうじゃなくて、私、ママを、ママを」
「いいのよ、子はそういうものだから。いつか親を乗り越えていくんだから。それでいいのよ」
「ママ……」
「ねえ、イッジ、あなたは私の記憶の全てを持ってる。いつも言うように、捨てていいのよ。あなたはあなただから」
「ううっ、ママ……」
「パキトポークのこと、あまり悪く思わないでね。分かるでしょ」
「うううっ、ごめんなさい!」
アイーナが懐から何かを取り出すのが見えた。
「さっきパポーからもらったもの。私の形見としてあなたがもらっておいて。すごく似合うと思う。結婚式にでもつけたらいいと思う」
マイクが小さな音を拾った。
レイチェルが息を呑んだのだ。
「これ……」
「さあ。きっと水系のどこかで拾ったんだろ。向こうを出るときには持ってなかったから」
「ママ……」
「パポーの奴、手加減しやがって。でも、こうして最後にあなたと話ができてよかった」
「えっ、ママ? ダメよ!」
「そろそろ行く時間。死者の務めを果たしに……」
「ママ! 嫌よ! 嫌やぁっ!」
「イッジ……、あなたが私の娘でよか……」




