408 愛してるでしょ?
ふっと風を感じた。
来た!
思い切りセイバーを振り下ろした。
しかし、その切っ先がうなりを上げることはなかった。
目と鼻の先にンドペキのヘッダーがあった。
両腕はンドペキの手に掴まれていた。
「振り下ろすなよ。見えてもないくせに。味方を切ってしまう」
と、チュットマの囁くような声がした。
「パパ、ンドペキ、聞いて」
心からほっとした。
「手短に言うわ。戦闘は無駄。あれはパキトポークとアイーナ」
「えっ」
「あの二人を愛して。愛してるでしょ? 愛してると念じるのよ。二人に届くように」
「パキトポーク? アイーナ?」
「訳を話している時間はないわ。そうして。お願い。みんなにもそう伝えて。レイチェルにも知らせた」
見渡せば、あちら、こちらと血飛沫が上がっている。
近い!
とんでもないことになってきた!
逃げ惑い、そこここに固まっている人々の間をパリサイドは駆け回っているのだ。
目に見えない速さで!
「愛しているよ、パキトポーク」
チョットマの囁きが聞こえてきた。
一瞬だが、パリサイドの姿が見えたような気がした。
そこにレイチェルの声。
スピーカーを通した声が響いてきた。
「パキトポーク、アイーナ、ここにいる人はみな、あなたを愛しているわ」
どうなっているんだ!
見えない敵。
パキトポーク? アイーナ?
「皆さん、パキトポークとアイーナよ。皆が大好きな。セオジュンが知らせてくれた。そうハワードよ。エリアREFにいた人なら知っているでしょ」
レイチェルの声は優しく響いているが、その間にも死体の数は増えていく。
「皆さん、逃げるのはやめて立ち止まって。そしてパキトポークとアイーナのことを思ってあげて。大好きだよって」
無茶だ!
レイチェル!
何を言ってる!
レイチェルの声はあくまで優しく澄んでいる。
チョットマの囁きもまた愛おしいほどに心地よい。
「ねえ、パキトポーク。東部方面攻撃隊のパキトポーク。本当のことを言うと、私、貴方がいつもちょっと怖かった。大好きだったけど、ちょっと近寄りがたくて。ごめんなさい。でもさ、分るでしょ。私の気持ち」
何を言ってるんだ! チョットマ!
パリサイドに話し掛けてどうする!
殺戮マシンだぞ!
もはや、鬼だぞ!
何が、愛してるだ!
レイチェルの声もまた響く。
「ねえ、パキトポーク。覚えてるかな、あの晩のこと」




