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399 愛妻弁当のお届け

「おっと、こんなところで」

 トゥルワドゥルーと出会った。


「いいねえ。愛妻弁当のお届けですか」

「瓦礫の撤去、ご苦労様です」

「大変な噂だよ、弁当。うらやましい! いいねえ、お宅の家庭は。イッジなんて、そんなこと、気づきもしない」

「頼んでみたら?」

「いやいや、スゥのように器用じゃないから」


 トゥルワドゥルーはいたって元気そうで、目元から笑みがこぼれている。



「瓦礫の壁、かなり進んでるね」


 トゥルワドゥルーは資材庫への道を切り開く工務班のトップ。


「おかげさんでね。しかし、運べど運べど、先が見えない。どれだけの区間が崩壊したのか分からないから。ようやくバーのところまで」

「ほう! かなり前進したわけだ。さぞ、イエロータドも喜ぶだろう」

「その通り。奴め、早速、いろいろなものを運び出しよった」

「碁盤もか?」

「碁盤? ああ、そう」



 相手が亡くなったことを思い出したのか、トゥルワドゥルーの顔が一瞬だが曇った。

 しかし、すぐに笑みを取り戻すと、

「イエロータドめが、レイチェルに話をしに行くそうだ。ボランティアセンターで酒を出してもいいかとな」



 避難所のど真ん中でバーを開く。

 さすがイエロータド。どんな時でも前向きだ。


「まさか、ホステスも雇う、なんてことはないだろうな」

「いや、奴のことだ。やりかねないぞ」

 トゥルワドゥルーが声を上げて笑った。



 トゥルワドゥルーはレイミ殺しの容疑者第一号。

 しかしイコマの中では、トゥルワドゥルーの頭上に掛かっていた暗雲はずいぶんと薄らいでいる。

 雲一つない空、とまではいかないが。


 そんな相手とこうして立ち話をしていることに微かな苛立ちを覚えながら、かといって話題をそちらに振るつもりもなく、言葉を繋いでいく。

 昔話でもするように。

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