398 議論は棚上げ
しかも、ガーデン暮らしも一週間以上が経ち、徐々に充足してきている。
トイレやシャワー、共同キッチンや、クリニック、ゴミ処理の問題、照明の点灯時間、連絡網、もちろん物資の配給システムなどは急速に整備されつつある。
プライバシーを確保するために、希望者には抽選ではあるが独立した小さな洞窟が与えられ、ガーデンの広場に多くの人と一緒にいたい人には小ぶりなドーム型のテントが手渡された。
そして各通路が瓦礫の壁によって封鎖されるまでの間に、一時的に自分の部屋に戻って、必要なものを持ち帰ってよいことになった。
その結果、ガーデンの広場は賑やかに物が溢れ、さながら大ピクニック会場のような様相を呈し始めた。
通行を確保するため、比較的歩きやすいところに、数人が並んで通れる直線状の広い通路が確保された。
そこには昼夜を問わず、煌々とした明かりが灯されることになった。
その通路をイコマはスゥと歩いていた。
今日の襲撃は終わった。
また二人、殺された。
が、ひとまずは安心していられる。
そんな空気が漂っていた。
「さっきの話、どう思う?」
「私はいいと思うけど」
ガーデンを捨て、避難所をシェルタに移した方がいいのでは、という意見が再び提起されていた。
シェルタなら人々はあの天井の高い大きな空間を中心に集うことになるが、そこは水系から離れている。
しかも水系から至る通路は複数あるとはいえ、ルートは限られているため、守り易いのではないかという意見。
かつて、ンドペキ達がレイチェル騎士団と会いまみえたあの場所。
チョットマが大演説をし、裏切り者のロクモンが射殺されたあの場所である。
エリアREFに住んでいた者、そして東部方面攻撃隊にとって、忘れ難いところだ。
「僕も問題はないように思うんやけど」
しかし、レイチェルが難色を示したのだった。
ここより狭いし、高低差もある。
太陽フレアによる環境の汚染が心配なのよ、とレイチェルは反対の理由を説明したが、それだけではないことは明白だった。
人類の秘宝が集められているからだろうか。
それを手にして人々の心が荒むことを危惧しているのだろうか。
「レイチェル個人にとって、都合の悪いことでもあるんやないかな」
とりあえずその議論は棚上げとなった。




