454 旨かった さすがや 見直した
レイチェルへの報告を終え、外に出るとイエロータドと出会った。
どんな時でもバーのマスターらしく、白いシャツにベスト、真っ黒なスラックスを穿いているイエロータドだが、今日はエンジとネイビーのチェックのワーキングシャツ。
「味噌汁、よかったぞ。旨かった。さすがや。見直した」
イエロータドを褒めちぎった。
本当に見直していた。
それもあるし、チョットマのためにイエロータドを味方につけておきたいという気持ちも少なからずあった。
あれほど機転が利いて、実行力もあるイエロータドなら、チョットマがいざというとき、力になってくれそうな気がした。
「チョットマが世話になったそうやな」
などと、世間話もしておかねば。
「何のことだ? そう言われて悪い気はしないがな」
イエロータドは、上機嫌で、
「ところで、レイチェル閣下は今、忙しそうか?」と、聞いてくる。
「ああ。僕もちょっと報告するのに、かれこれ一時間も待たされた」
「そうか」と、イエロータドは地面に座り込んだ。
「脚が疲れて」
「報告、急がなくていいのか?」
「ああ」
イコマもイエロータドの横に腰を下した。
人々は行き交っているが、こちらに注意を向ける者はない。
心置きなく話せる。
イエロータドが、石ころを拾い上げながら言った。
「ところで、レイミの件、どうなってる?」
「気になるのか?」
「まあな」
先日までとは形勢逆転。
チョットマに話したことが、こちらの耳にも入っていると承知の上だろう。
ただ、その前提は念押ししておこう。
「チョットマから聞いたぞ」
イエロータドにとっては、まあな、どころではないだろう。
犯人隠匿罪、と言ってやってもいいくらいだ。
しかしそうは言わなかった。
「レイミの件、あれきり、進んじゃいないさ。ボニボニもそれどころじゃない」
と、安心させてやればいい。
実際、それどころではないわけだから。
「そうか」と、イエロータドはひとつ小さな溜息をついた。
横顔がどこか寂しそうだった。
初めての友人が罪人かもしれず、嘘のつけないアンドロとしては胸が苦しいのかもしれない。
バー再開の目途は立たず、チョットマにも振られた。
よれよれのワークシャツ姿のイエロータドは、まさしくどこにでもいる太ったオヤジになっていた。




