388 そう応えておいて
イコマはレイチェルの執務室に入った。
さっき聞いたキョー・マチボリーがやろうとしていることを報告しておかなければいけない。
もちろん、チョットマとロームスのことを話すつもりはない。
相変わらず、レイチェルにはいろいろな問題が持ち込まれている。
市民の様子や生活環境の整備について。そして、資材庫を封じている崩落した瓦礫撤去の進捗状況。
チョットマのことが頭から離れない。
ユウとスゥ、ンドペキには伝えておこう。
チョットマはユウには言い出せなかったのだろうが、知らせないでおくわけにはいかない。
それに、ユウならいい考えがあるかもしれない。
ロームスがチョットマに語り掛けた切れ切れの言葉。
どんな意味があるのか。
何度も何度も反芻しながら、イコマはレイチェルの前に座った。
「イコマ、どう思います?」
我に返った。
「瓦礫撤去のスピードを上げることにしました。その方が市民の気も紛れるし、前向きになれると思うから。でも、瓦礫を捨てるところが難しくて」
なるほど。
「たくさんある洞窟に放り込めという意見もあるし、そんなことをしたら先々困ることになるかもしれない、という意見もあるのよ。かといって、水系に放り込むわけにもいかないし」
「そうですか」
どうでもいいことのように感じた。
レイチェルに見据えられている。
その目は、早く結論を出してしまいたいのよ、と言っている。
「運ぶのは大変ですが、ガーデンの水系沿いに壁を作ったらいかがです? ガーデンだけじゃなく水系に面する通路すべてを石で封鎖して。生活のための水さえ引ければいいんだから」
そう応えておいて、またチョットマの今の思いへと想念を広げていった。




