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382 婚約指輪を見せて
「それで、イッジは結婚を先延ばしにしたのかな」
そう言ったのはアヤだった。
「かもしれない」
「だとすれば、イッジも何かを知ったということよね」
そう思ったこともあった。
しかし、それを彼女にどう聞けばいいのだろう。それが分からなくてそのままにしてきたのだった。
「聞いてみればいいのよ。ズバリ」
「例えば何を?」
「もちろん、結婚を先延ばしにした理由」
そんなプライベートなことを、と思ったが口にはしなかった。
スゥがキッチンから出てきてこう言ったからだ。
「婚約指輪、見せてって」
「ん?」
「裏を返せば、まだ持っている?ってこと。案外、もう返したとか、捨てたって返事が聞けるかもよ」
「指輪ねえ」
「婚約を破棄したってことも考えられるやん。それなら、その理由の一端でも掴めるかも。つまり、トゥルワドゥルーの悪事にイッジが気づいたら、ってことやね」
なるほど、しかし。
「無理や」
話してくれるはずがない。
「あれ、何言うてるん。ノブが聞く、なんてありえないやん。平手打ちをくらわせたばかりなんやから。つい昨日のことやで」
「あ、そうか」
「そうやなあ。誰が」
スゥは弁当を包みながら言う。
「適任かなあ。ユウ? 違うな。そうか、ボニボニ。それがいいかも」
ユウがたらこパスタを頬張った口で、「うんうん」と賛意を示した。




