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443/568

443 私のすべてをあげるから、それで満足して

 つまり、レイチェルはね。

 自分の身も心もロームスの自由にさせる、それをロームスに提案することでこの実験を収束させることはできないか。

 そう考えてる。

 ロームスがこの実験で何を得たいのか分からないけど、私のすべてをあげるから、それを実験の成果として満足して、というわけなん。


「そんな……」


 レイチェルは本気。

 だからそれまで、是が非でも防衛部が市民の心の拠り所であって欲しいと思ってる。

 スジーウォンやンドペキには悪いけど、役に立たないけどお守りみたいな存在。

 防衛部にはそうあって欲しいと思ってるねん。


「そうやったんか……」


 レイチェルは最後の人類一万五千人のリーダーとして、自分に何ができるか、それをずっと考えてる。

 自分が死ぬこと、もう悩んだり、躊躇はない。

 覚悟はできてる。

 でも、それをロームスに伝える方法が分からない。

 彼女の悩みはそこにあるねん。



 レイチェルはロームスにその意思を伝えようと、自分の胸の内にもいるであろうロームスに語りかけているという。

 しかし、返事はないし、自分の胸に何の兆しもないのだという。


「いざとなれば、それを伝える役割を誰かに頼まないといけないかもしれない、そこがレイチェルの悩み」


 つまり、誰かにロームスとの橋渡しを頼まなくてはいけないというのだ。



 そんな恐ろしいことを誰に頼めるか。

 頼めるはずがない。

 そもそも、ロームスと会話した者など、誰もいないのだから。


 それに、ユーペリオンにいる市民は、ロームスと言葉を交わすことはもちろん、どんな接触もするまいと、必死の思いで抗ってきた人々なのだ。

 そんな人に、ロームスに伝えて、などと言えるはずもない。


 チョットマを除いて。

 そして、もしかするとアヤを除いて。



「さっきのメッセージ。キョー・マチボリーは、新たな情報があれば、スジーウォンにも直接伝えようか、ってことやってん」

「なるほど」

「その申し出は無視すると思うけどね。レイチェルは」



「中途半端な時間だし、晩餐というわけじゃないから、簡単なもので」

 スゥが食事を運んでくれる。

「ユウは早く寝たいでしょ」


 軽く焼いたフランスパンにオリーブオイル、たらこペーストを絡めたパスタ、それにアボガドとゆがいた大ぶりのエビのマヨネーズ和え。


「おおっ、豪華やな」

「ノブの好物」

「よくこんなもの、手に入ったな」

「さっき、洞窟の私の部屋から持てるだけ持って来たんやんか」



「おいしい!」とユウが顔をほころばせた。

「ンドペキも食べていけばよかったのに」


 アヤもチョットマも、ようやく笑顔をみせた。

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