442 キョー・マチボリーからの報告
「レイチェルへのメモ、なんやったんや?」
ユウは、さっき明らかに顔をこわばらせていた。
「キョー・マチボリーからの報告」
「キャプテンが?」
「実はね」
ユウは、笑っているのか怒っているのか、微妙な表情を見せた。
「これ、絶対内緒」
と声を潜める。
「レイチェルも私も、パリサイドが襲ってくる数分前には知っててん」
「えっ?」
「クルー達の報告がキョー・マチボリーに届き、それを私達にも伝えてくれてた」
「ええっ。そうなのか」
「上陸地点も分かってた。でも市民はもちろん、スジーウォンやンドペキにも伝えなかった」
「なんでやねん!」
「レイチェルには内緒やで。私がこの話をしたこと」
「ああ。でも、なんでや?」
「みんなも内緒やで。アヤちゃんもチョットマもンドペキに言ったらあかんよ。ンドペキを守るためでもあるんやから」
娘たちはぎごちなく頷いた。
「レイチェルはこう思ってるねん」
市民は、いや最後の人類は絶望の淵にある。
最後の望みはスジーウォンやンドペキ率いる防衛部。この避難所を守り抜いてくれる。
たとえパリサイドに歯が立たないとしても、何とか抵抗してくれるのではないか。
もし、上陸地点を伝えたら、スジーウォンやンドペキ達はそこに殺到し、パリサイドと相まみえることになる。
正面作戦。
そうなれば防衛部全体が殲滅される恐れがある。
結果、市民の心の拠り所がなくなる。
残るは絶望のみ。
「レイチェルは、それだけは避けたいと思ってて」
絶望だけが支配する中で、人類を絶滅させたくない。そう考えているという。
「彼女が会議の冒頭に言ったこと、ロームスが欲するものを差し出すことで事態を収拾する、あれはレイチェルの覚悟」
そうだ、レイチェルはそう言った。
結局、その意味を聞けずじまいだったが。




